2000 Fiscal Year Annual Research Report
工業化を指向した,原子状水素を用いる選択的水素添加反応の開発
Project/Area Number |
12650848
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
牧 昌次郎 電気通信大学, 電気通信学部, 助手 (20266349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平野 誉 電気通信大学, 電気通信学部, 助教授 (20238380)
丹羽 治樹 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (20135297)
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Keywords | パラジウム / 選択的水素添加反応 / 環境調和型 / 触媒 / 有機合成 / 工業合成 / 新規機能材料 / 水素 |
Research Abstract |
本研究の,第一目標としている「加水素分解を伴わない水素添加反応」に関して,基礎的条件の検討をほぼ完了した.すなわち,分子内にベンジルオキシ基を含む10種のアルケンに対し,2種の異なった条件で調製したパラジウムブラックが「加水素分解を伴わない水素添加反応」を行うことを見い出した.この高い選択性と一般性は,申請者が調べた限り,未だ報告がない.また,当初必要条件と思われていた,還元システムやこのシステムで生成する原子状水素は,選択的反応に本質的には必要無いことも判明した.この結果は,選択的反応の本質が,当初予想していた電気化学的手法を用いた還元システムにあるのではなく,触媒の調製方法の違いによる材質の差異に起因していることを強く示唆している. さらにこの選択的反応は,溶媒効果を強く受けることも見い出された.分子内にベンジルエーテルあるいはベンジルエステルを含むアルケン2種を基質とし,4種の異なった調製方法で作成したパラジウムブラックを触媒として溶媒10種類に対して反応を行った.この結果,総じてベンゼン以外に於いては選択性は見られず,溶媒が反応におよぼす影響が大きいことが確認された. 本研究結果は論文として発表を予定しているが,これに先立って結果の一部を学会で発表を行ったところ,多くの企業から高い感心を集めた.これを受けて,実践的反応にグレードアップするため,医薬品などの実用的化合物に対応した試験基質の合成を現在行っている.また第二目標である「二重結合同士の選択的水素添加反応の一般的手法の開発」に関しては,現在まで全く報告例が無く不可能と思われていたが,これに対しても有力な手がかりを得ている.
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