2000 Fiscal Year Annual Research Report
高圧光学セルを用いた光変調DSC法による、高分子結晶における臨界現象の研究
Project/Area Number |
12650885
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 孝 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 教授 (60107159)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 雅人 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助手 (00273540)
猿山 靖夫 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助教授 (50162532)
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Keywords | 光変調DSC / 相転移 / 臨界現象 / 高温高圧 / 比熱測定 / 結晶成長 / 結晶融解 / 球晶形成 |
Research Abstract |
高分子結晶において、二次相転移、もしくは臨界点の存在が厳密に証明された例はこれまでなかったが、私たちは最近、ポリアミドとフッ素系共重合体結晶において二次相転移を見出した。本研究では、新しい比熱測定法である光変調DSC法を利用して高圧下における精密な比熱測定を行い、上記研究内容を精密化・理論化し、高分子結晶相転移の分子論的機構を解明する。さらに上記方法を広範に展開することにより、高分子の結晶成長・融解や、球晶の形成・消滅過程などの分子論的機構を普遍的に理解する方法論へと発展させることを目的とする。 本年度(平成12年度)は、高圧下光変調DSC測定システムの作製と性能確認を中心に研究を進めた。まず、光変調DSCの装置特性(測定信号の大きさとノイズ)を、周波数、温度、および雰囲気依存性に関して検討した。その結果、測定信号の大きさは、10^<-1>Hz近傍で最大となること、周囲の雰囲気の熱伝導率が結果に影響することが分かった。最初の測定試料としてポリブチレンテレフタレートを選び、その融解カイネティクスを検討した。この試料は、通常のDSC測定では2つの融解吸熱ピークを示す。本実験では、その速度論的特徴を調べ、高温側、低温側、二つの融解速度の温度依存性に違いがあるという結果が得られた。次にポリスチレンの球晶成長を解析し、融点以上でも秩序構造の存在する可能性を示した。これらの結果は、光変調DSC測定システムが本研究の目的に合致した性能を有することを示している。高圧装置に関しては、300℃、3000気圧までは確認し、電極も正常に作動した。容器のシール(バイトン+peek)に若干問題があったが、カルレッツ+セラゾールに交換した結果、高温高圧下でのデータ収集が可能であることを確認した。今後、本システムを用いて、高分子の相転移、結晶成長・融解や、球晶の形成・消滅過程などに関する分子論的研究を展開していく。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Toda,Akihiko: "A Modeling of the Irreversible Melting Kinetics of Polymer Crystals Responding to Temperature Modulation with Retardation of Melting Rate Coefficient"Polymer. (in press). (2001)
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[Publications] Hashimoto,Masato: "Crystal Growth of Isotactic Polystyrene from the Melt and Its Morphology"Reports on Progress in Polymer Physics in Japan. (in press). (2000)
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[Publications] Saruyama,Yasuo: "Frequency Dependence of the Dynamic Heat Capacity at the Melting Temperature of Polyethylene Crystals"Journal of Thermal Analysis and Calorimetry. 59. 271-278 (2000)
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[Publications] Ishikawa,Hiroya: "Phase Transition in Nylon Crystals"3rd Joint Synposium Polytechnic University-Kyoto Institute of Technology. 43 (2000)
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[Publications] Hashimoto,Masato: "Melt Memory Effects and Self-Seeding Process on Crystal Growth of Isotactic Polystyrene from the Melt"3rd Joint Symposium Polytechnic University-Kyoto Institute of Technology. 44 (2000)