2000 Fiscal Year Annual Research Report
イネ穎果の登熟における植物ホルモンと炭水化物の役割
Project/Area Number |
12660010
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 貞二 東北大学, 大学院・農学研究科, 助手 (70155844)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 孝幸 東北大学, 農学部, 教務職員 (80241553)
後藤 雄佐 東北大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (80122919)
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Keywords | イネ / 強勢な穎果 / 弱勢な穎果 / ABA / 炭水化物 / 胚乳 / 初期生長 / 登熟 |
Research Abstract |
実験はすべてササニシキを用いて行った.二酸化炭素施与や遮光により,穎果の利用可能な炭水化物供給量を増減させ,穂の下部に着生する弱勢な穎果の初期生長や登熟に及ぼす影響を調査した.その結果,初期生長は,光の強さに影響されるが,それは光合成以外の要因を通じた影響であることが示された.一方,デンプン蓄積期における粒重の増加は,利用可能な炭水化物量の影響を受けることが示された. 出穂期に,遮光処理を行い葉身のアブシジン酸(ABA)レベルを測定した結果,遮光はそのレベルを大幅に低下させることが明らかとなった.ABA処理は弱勢な穎果の初期生長を促進すること,またその内生レベルは生長の遅い弱勢な穎果よりも生長の速い強勢な穎果で高いこと,また穎果間引き処理により残された弱勢な穎果のABAレベルが増加するという既知の事実と合わせて考えると,登熟初期の穎果におけるABAの起源は葉である可能性が示され,とくに日射不足など葉でのABAの生産量が少なくなる条件下で,強勢な穎果と弱勢な穎果との間にABAレベルの差が生じ,両穎果の初期生長に差が生じると考えられた. 次に,24℃,日長12時間の条件下で穎果の初期生長および細胞分裂の日変化を調べた結果,穎果の伸長は,日中行われること,胚乳の細胞分裂は明期もしくは暗期に移った直後に行われ,ほぼ12時間周期であることが示された.よって,胚乳の細胞分裂は穎果の初期生長に直接貢献するのではなく,それらが日中に伸長することにより穎果の初期生長に貢献すること,さらに伸長は日中行われる事実から,光合成産物の関与が示唆された.しかし,生長の速い強勢な穎果よりも弱勢な穎果の方が日中の糖プールが大きいことがすでに明らかになっているので,強勢な穎果と弱勢な穎果の初期生長の違いはおそらく細胞分裂速度の違いであると考えられた.今後,細胞分裂と日長や光の強さ,さらにはABAなどホルモンとの関係を調べる必要があると思われた.
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Research Products
(1 results)