2000 Fiscal Year Annual Research Report
水稲の再生紙マルチ無農業・無化学肥料栽培における有機物施用と根の生理活性との関係
Project/Area Number |
12660014
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
山口 武視 鳥取大学, 農学部, 助教授 (30182447)
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Keywords | 水稲 / 珪酸 / 出液 / 紙マルチ / 自然農法 / 土壌溶液 |
Research Abstract |
本年は、稲体珪酸含有率が高いと病害虫抵抗性が高まることに着目し、稲体を素材とする各種珪酸質資材の供給能力と根の生理的活性および稲体珪酸吸収量との関係を検討した。 <材料と方法>品種コシヒカリを19.4株/m^2の密度で機械移植し、処理は、珪酸資材(籾殻堆肥、稲藁堆肥、籾殻薫炭、無施用)、防除体系(慣行、無農薬)、基肥窒素施用量(2水準)を組み合わせて16区設けた。珪酸資材は新鮮重で2kg/m^2施用した。穂肥は7月10日に全区とも3.7gN/m^2施し、無農薬区では、雑草防除のため移植時に黒色紙をマルチングした。生育期間中、計6回、各区より土壌溶液、出液、稲体を採取し、それぞれの珪酸含量を定量した。 <結果>1.精玄米収量は222〜409g/m^2の範囲にあり、全区とも低収であった。これは登熟歩合が平均75.5%と極めて低いことが主因であった。珪酸資材による窒素投入量は稲藁堆肥区11.0g/m^2、籾殻堆肥区8.4g/m^2、籾殻薫炭区3.1g/m^2であったが、珪酸資材間では収量に有意差がなく、防除の有無により有意な収量差(慣行区379g/m^2、無農薬区293g/m^2)が生じた。これは無農薬区の登熟期間の乾物増加量が小さく、その結果、登熟歩合、千粒重ともに低下したためであった。 2.葉身珪酸含有率は生育期間を通して、籾殻薫炭>籾殻堆肥>稲藁堆肥>無施用の順に高く、収穫時の珪酸吸収量も同順であった。土壌溶液中珪酸濃度も葉身珪酸含有率と同様の傾向にあり、両者は正の相関関係にあった。また、根の生理的活性を代表する出液速度は資材間で差はなかったが、出穂期までの出液中平均珪酸量と出穂期の葉身珪酸含有率とは比例関係が成立した。以上のことにより、珪酸資材の投入で土壌中珪酸濃度が高まり、出液中珪酸量が上昇し、結果として葉身に多量の珪酸が集積するという過程が想定できた。つまり、培地である土壌溶液中珪酸濃度を高めることで稲体珪酸吸収量を増大させることが出来るといえた。
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