Research Abstract |
"Culture Pack"(CP)はガス透過性や光透過性が高いフッ素樹脂ネオフロン【〇!C】PFAフィルム(PFA)を素材とした培養容器であるが,PFAは高価格であり,CPの実用化にあたっては,より安価なフィルム素材の適用が望まれている.本研究では,PFAに比べ非常に低価格で,ガス透過性,耐熱性に優れたTPXフィルムとCPPフィルムからなる多層構造フィルム(OTP)とPFAを用いて,両フィルムで作製したCPでのシンビジウム小植物体の生育,容器内のガス環境,小植物体の光合成能の測定を行い,フィルム素材としてのOTPの有効性を検討した. (1)OTPフィルムを用いたCPの試作とクローン苗育成試験 まず,OTPおよびPFAで作製したCP・ロックウールシステム(液体培地120ml注入)に,Morning Moon'Wild Yellow',Sweet Shower'Plume' ,Great Katy'Love Me'のin vitroで増殖した苗条(展開用3枚,根は切除)を植付け,25℃,16時間日長,3000ppmCO_2施用条件下で培養した.従来の培養法として,三角フラスコ・寒天培地を用いた.その結果,3品種いずれにおいても,OTPを素材とするCPで生育した小植物体は,従来法のものに比べ,生育は促進され,PFAを素材とするCPで生育したものとほぼ同等の生育を示すことが明らかになった.また,それぞれの培養システムで生育した培養苗を温室内で2ヶ月間順化・生育させたところ,両フィルムを素材とするCP間で差はなく,OTPのものと,PFAのものはほぼ同等の生育を示し,順化後も従来法のものに比べ生育は促進された. (2)OTPフィルム培養システム内のガス環境の調査 次に,OTP製CP,PFA製CPおよび従来法であるミリシール付フラスコで小植物体を培養中に,容器内のCO_2濃度の日変化を測定した結果,OTPおよびPFAを素材としたCP内の明期中のCO_2濃度は,従来法であるフラスコに比べ,比較的高い濃度で推移した.また,生長や老化に対して抑制効果を及ぼすエチレンについても,従来法に比べ(約0.05pp),OTP製CPおよびPFA製CP内のエチレン濃度は低かった(約0.01ppm).これらのことから,OTPおよびPFAのガス透過性は高く,ほぼ同等であると判断された. (3)クローン苗の微細構造と光合成能力の調査 さらに,携帯用光合成蒸散測定システムを用いて,各培養システムで生育した小植物体の葉の光合成速度を測定したところ,OTPおよびPFAを素材としたCPで生育した小植物体の葉の光合成速度は,従来法で生育したものに比べ,高い値を示した. 以上の結果,小植物体の生育,培養容器内のガス環境,小植物体の光合成能の面から評価すると,フィルム培養システムのフィルム素材として,OTPはPFAとほぼ同等の性能を有していると判断された.
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