Research Abstract |
平成12年度は,フッ素樹脂ネオフロン【○!R】PFA力ルム(PFA)に比べ非常に低価格で,ガス透過性・耐熱性に優れた多層構造OTPフイルムに注目し,新フィルム培養システムの素材としての有用性と実用生を明らかにした.平成13年度では,PFA製フィルム培養システムの実用モテルである"MlraclePack"(MP)の開発経験を生かし,OTPフィルムを用いた実用性と高機能を備えたクローン苗生産用ディスポーザブル新培養容器を試作した.ここでは,まず新培養容器について概説し,次にクローン苗生産システムとしての利用面について検討を加えた. 【新培養容器の概要】新培養容器「Vitron」の素材として採用したOTPフィルムは,TPX層・接着層・PP層から成る厚さ35μmの三層構造で,酸素透過度(10000ml/m^2・24hr・atm),二酸化炭素透過度(30000ml/同)の機能を持つ.また,光透過性は濁度(ヘイズ)5,構成元素が炭素と水素のみで廃棄性に優れ,高圧蒸気滅菌に耐える耐熱性を備える.面積比率70%以上がこのフィルムで構成されるVitronは,(1)容器本体,(2)トップシールフィルム(TSF)および(3)保護フタの3パーツから成る.容器本体は開口部が広く(122×122mm),底部は片手で持って作業しても苦にならない大きさ(90×90mm)で,高さはシンビジウム苗も十分育つ高さ(140mm(である.TSFはアクリル系粘着剤により容器本体を密閉し,保護フタはTSFを保護し,スタック性を付与する.これら3パーツは滅菌された状態で供給される. 【材料および方法】ここでは,種々の外植体を,さまざまな培養形態で培養した.すなわち,サツマイモ(鳴門金時)では16節切片(4mm前後,葉切除)を有糖寒天培地で,イチゴ(アイベリー)では25苗条(展開葉3枚)を3000ppmCO_2施用・無糖液体培地添加のロッカウール(RW,5×5ブロック)で,シンビジウム(Eastern Wind 'Jupiter')ではPLB集塊(生体重約0.26g,平均PLB数7.2)10個を有糖液体培地で,それぞれ培養した.また,ユーカリ(E. uro-grandis)ではCO_2施用・無糖培地添加オアシスで得られた小植物体を鉢上げし,2ヶ月間順化・生育させた.なお,いずれの植物種でも厚さ30μmOTP製MP,厚さ25μmPFA製MPおよびVitronを用い,25℃,16時間日長下で培養した. 【結果および考察】サツマイモでは,Vitronで得られた小植物体は,両フィルム製MPのものに比べ大きかった.イチゴでは,培養システム間で小植物体の生育に差は認められなかった.また,シンビジウムでは,いずれの培養システムでも大きなPLB集塊が得られ,PLB数も大差はなかった.一方,各培養システムで得られたユーカリ小植物体を順化した結果,Vitron由来の小植物体は,他の培養システムのものに比べ,地上部生体重が有意に増大した. 本研究の結果,今回試作した新培養容器Vitronは,さまざまな培養形態に対応が可能なクローン苗生産用培養システムとして優れた実用性を有することが明らかとなり,マイクロプロパゲーションでの実用化が期待できる.
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