2000 Fiscal Year Annual Research Report
棚田に生育する植物の多様性に関する保全生態学的研究
Project/Area Number |
12660032
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
冨永 達 京都府立大学, 農学部, 教授 (10135551)
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Keywords | 棚田 / 二次的自然 / 植物 / 種多様性 / 遺伝的多様性 / 絶滅危惧種 / スブタ / ミズオオバコ |
Research Abstract |
棚田は独特の景観を呈するとともに,植物にとっても独特の生育環境を提供しでいる。本研究では,棚田に生育する植物の種多様性及び遺伝的多様性を明らかにした。 まず,京都府北部の丹後半島の棚田の畦畔に生育する植物の種多様性を一年を通して平野部の水田と比較した。棚田の畦畔では一年に75種が出現し,平野部の畦畔では71種が出現した。種多様度は棚田の畦畔で高かったが,帰化植物の占める割合はわずか9%で平野部の水田より低かった。調査対象の棚田では畦畔の草刈りが定期的に行われ,このため多くの種が季節変化をともなって生育することが可能で,種多様度が高いと推定された。一方,平野部の水田の畦畔は,基盤整備によって破壊的な撹乱を受け,在来植生が崩壊した結果,帰化植物が侵入し,種多様度が低くなったと推定された。 次に,トチカガミ科の水田雑草の分布を丹後半島において調査した。その結果,絶滅危惧II類のスブタは2ヶ所で,ヤナギスブタは3ヶ所で,ミズオオバコは7ヶ所で生育を確認した。スブタは生育数が極端に少なかったので遺伝的な解析を行わなかった。ヤナギスブタはRAPD分析の結果,明らかに地域集団に分化していた。ミズオオバコは,ヤナギスブタと比較して遺伝的な多様性が高かった。ある地域では,上流にあるハス田から種子が供給されていることが遺伝的解析の結果から推定され,このことは生物の多様性の保全のために地域全体を保全する必要があることを示唆している。また,特定の地域集団では,集団内の遺伝的な多様性が全く認められなかった。さらに,これら3種は従来他殖であると報告されてきたが,蕾受粉を行っていることが明らかになった。
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Research Products
(2 results)