2001 Fiscal Year Annual Research Report
カエル類の移動能に着目した農村集落の生物相保全機能に関する研究
Project/Area Number |
12660035
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
勝野 武彦 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (20060014)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
葉山 嘉一 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (00139049)
島田 正文 日本大学短期大学部, 教授 (80123173)
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Keywords | カエル類 / 農村環境 / 生物相保全 / 散居村屋敷林 / 胆沢扇状地 |
Research Abstract |
農(耕)地が面として連続的に広がる農村域を対象とし、水平的関係におけるカエル類の分布動態から生息を制限する要因を抽出した。散居集落を持つ岩手県胆沢地区で事例調査を行い、扇状地水田の端から中心方向への軸に沿うよう1/25,000スケールでのベルト・トランセクトを想定し、カエル類の扇状地中心方向への分布限界を把握した。 調査の結果、ニホンアカガエル、ヤマアカガエルの2種は丘陵地際に生息が限られており、扇状地中央部への侵出が抑えられていることが示された。一方、両種は丘陵地際から1.5〜2kmの範囲に隔離的に生息域が残存していた。胆沢川流域の段丘面区分図に今回設定したベルトを当てはめると、この1.5〜2kmの範囲は横道段丘面に位置している。より上位の上野原段丘面からの浸透水によりシルト層上に溜まり水が形成されやすいと考えられ、これが飛び地的に横道段丘面においてアカガエル2種の生息を可能にしてきた理由であると推察された。 ツチガエルの生息分布を段丘面区分図にあてはめると、扇状地の南半分を占める上野原・横道・堀切の各段丘面では広く生息しているが、福原段丘面に入ると急激にその生息確認が低くなり、水沢高位段丘面では生息が見られなくなる。これはシュレーゲルアオガエルについても類似した関係が認められるが、本種の場合、水沢高位段丘面に入っても小数の生息が確認されている。各段丘面における樹林地の存在様態の差異が、散居屋敷林のような小規模な樹林地ではなく、まとまった樹林帯の存在がシュレーゲルアオガエルのような非繁殖期に主に樹林地等で生活するカエル類にとって生息条件となる可能性が示唆された。さらに、圃場整備に伴う水路構造の変化が生息に負の影響を及ぼすツチガエルは、この圃場整備の進行状態がその生息に関与してくると考えられる。 このように段丘面の分布とカエル類の生息状況が比較的良く対応していることが明らかにされた。
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Research Products
(1 results)