2000 Fiscal Year Annual Research Report
タイヌビエの多除草剤抵抗性発現に関する生態遺伝学的研究
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12660044
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山末 祐二 京都大学, 農学研究科, 助教授 (60093332)
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Keywords | タイヌビエ / 除草剤 / 除草剤抵抗性 / 雑草 / 多除草剤抵抗性 |
Research Abstract |
1997年、新しいタイプの除草剤抵抗性を獲得したタイヌビエ(Echinochloa oryzicola Vasing.)のバイオタイプが米国カルフォルニア州サクラメントの稲作地帯の散在した水田で発見された。このバイオタイプは、それまで連用されたbenthiocarb,molinateだけでなく、これら除草剤と構造、作用機差において類似性がなく、また使用歴もない除草剤にも抵抗性をもつ多剤抵抗性である。本年度の研究目的は、サクラメントの水田で採種されタイヌビエ多剤抵抗性バイオタイプと感受性系統の間の類縁関係を個体の形態およびAFLPマーカーによって調べることである。 タイヌビエの多剤抵抗性(R)と感受性(S)バイオタイプの形態形質を調べ、その結果を主成分分析した。R、Sバイオタイプの草丈、止葉長、稈径の平均値は、それぞれ126,144cm;18,26cm;3.6,4.3mmであり、Rバイオタイプの個体はSバイオタイプと比べて小型であった。とくに、Rバイオタイプの小穂は、小さい小穂幅と厚みの測定値に示されるように、Sバイオタイプの小穂と比べて明らかに細身である印象が強かった。また、Rバイオタイプの総ての個体と小穂の形態形質の標準偏差と変動係数は、Sバイオタイプのそれらより小さく、この結果を反映して、主成分分析によるスコア散布図でのRバイオタイプの系統は第2,3象限に1つのクラスターを形成した。さらに、AFLP分析の結果をクラスター分析した系統樹でも、Rバイオタイプの系統は初期の段階でクラスターが結合し遺伝的な類縁関係が大きいことが示唆された。 以上の結果から、Rバイオタイプの各系統は、個体と種子の形態形質や遺伝的なAFLPマーカーにおいて、お互いに極めて類縁関係が大きいことが明らかである。したがって、米国カルフォルニア州サクラメントの稲作地帯の散在した水田で発見された多剤抵抗性のタイヌビエは、除草剤連用によって1つの水田で生じたRバイオタイプが拡散、あるいはすでに拡散していたRバイオタイプが同時多発的に顕在化した可能性がある。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 辻綾一郎,A.J.Fischer,山末祐二: "タイヌビエの多剤抵抗性に関する生理遺伝学的研究-形態およびAFLP解析によるR,Sバイオタイプの類縁関係"雑草研究. 46巻別号(印刷中). (2001)
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[Publications] Yamasue,Y.: "Strategy of Echinochloa oryzicola for the survival in flooded rice"Weed Biology and Management. 1巻1号. 28-46 (2001)