2001 Fiscal Year Annual Research Report
関口病斑をマーカーにしたエリシターおよびサプレッサーの分子機構解明
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12660046
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
荒瀬 栄 島根大学, 生物資源科学部, 教授 (40127478)
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Keywords | イネいもち病 / 突然変異イネ / トリプタミン / エリシター / モノアミン酸化酵素 / 活性酸素 / 関口病斑 |
Research Abstract |
非親和性イネいもち病菌レースの感染によりイネ品種関口朝日に特異的に形成される関口病斑では侵入菌糸の伸展や胞子形成は非常に貧弱である。病斑中からの抗菌物質の抽出を試みた結果、インドール系化合物の一つであるトリプタミン(Try)が単離された。これは、高濃度ではいもち病菌の胞子発芽を、低濃度では付着器からの侵入菌糸形成を著しく阻害した。Ttyをイネ品種関口朝日の切り葉に処理すると光依存的に関口病斑類似壊死斑(壊死斑)が誘導され、Tryの酸化酵素であるモノアミシ酸化酵素(MAO)の基質となるβ-フェニルエチルアミン処理イネ葉でも光依存的に壊死斑が誘導された。しかし、TryにMAOの阻害剤やH_2O_2消去剤であるアスコルビン酸やカタラーゼを添加した場合には壊死斑は誘導されなかった。また、壊死斑はH_2O_2処理により光依存的に誘導された。このことは関口病斑形成にH_2O_2が関与していることを示した。事実、H_2O_2を組織化学的に検出する3,3'-diaminobenzidine試薬を関口病斑部に処理するとH_2O_2生成を示す濃褐色の反応が認められた。また、親和性レースを接種したイネ葉には多くのいもち病斑が形成され、Tryの蓄積およびMAO活性はほとんど認められなかったが、非親和性レース接種葉では接種後6時間からTryの蓄積が認められ、またMAO活性も親和性菌接種葉の約4倍に増加し、多くの関口病斑が形成された。これらの結果より本変異イネの抵抗性発現は次のように考察された。即ち、関口病斑は、いもち病菌の発芽胞子により放出される菌体成分が第1次因子となってTry蓄積を誘導し、これが酵素作用を受けて生じたH_2O_2により関日病斑が形成されると共に、いもち病菌の侵入を阻止する抵抗性が誘導されると推定された。しかも、関口病斑形成は非親和性レースにより特異的に誘導されるため、今後、大型の関口病斑という肉眼検出可能な変果イネの抵抗現象及びその内部に蓄積する物質をマーカーに関口病斑形成やTry蓄積あるいは阻害機構を研究すれば、非親和性レースがイネ側に抵抗性を誘導する物質(エリシター)を明らかにできると共に、イネの抵抗性解明につながると考えられた。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Arase, S. et al.: "Light-dependent accumulation of tryptamine in the rice Sekiguchi lesion mutant infected with Magnaporthe grisea"Journal of Phytopathology. 149. 409-413 (2001)
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[Publications] Arase, S., Ueno, M., Honda, Y.: "Advances in Microbial Toxin Research and its Biotechnological Exploitation"Kluwer Academic/Plenum Press, New York, USA(印刷中). (2002)