2001 Fiscal Year Annual Research Report
真核糸状菌(植物病原菌を含む)におけるメラニン合成と耐熱性獲得に関する研究
Project/Area Number |
12660049
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Research Institution | TOYO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
藤村 真 東洋大学, 生命科学部, 助教授 (50297735)
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Keywords | メラニン / 耐熱性 / イネいもち病菌 / ポリケタイド合成酵素 / Neurospora / Verticillium |
Research Abstract |
昨年度クローニングしたアカパンカビのポリケタイド合成酵素(PKS)遺伝子をメラニン合成欠損per-1株に形質転換したところ、子嚢核、子嚢胞子のメラニン化および耐熱性が回復した。さらに、per-1変異株のPKS遺伝子を解析したところ、N末端側の1アミノ酸が終止コドンへ置換していた。このことから、アカパンカビのメラニンはDHNメラニンであること、その合成遺伝子の変異により子嚢胞子はメラニン合成と耐熱性を同時に欠失することが明らかになった。また、RT-PCR解析により、メラニン合成系PKS遺伝子およびNHR(ナフタレンレダクターゼ)遺伝子は、交配後にmRNAの転写活性が上昇することが判明した。アカパンカビでは有性世代特異的にメラニン合成酵素が誘導され、メラニン合成が行われると考えられた。 昨年度、メラニン合成阻害剤が、イネいもち病菌の胞子の耐熱性を低下させることを見いだした。そこで、2種類のメラニン合成欠損(alb,brn)株を入手し、メラニンの耐熱性に及ぼす影響について調べた。その結果、メラニン合成欠損株の胞子の耐熱性は野生株とほとんど変わらないことが判明した。耐熱性の低下はメラニン合成阻害剤の二次的な作用である可能性が示唆されたが、alb株では、薬剤処理による胞子形成・耐熱性の低下は認められなかった。メラニン合成経路と耐熱性は何らかの関連を持っていると考えられた。 土壌植物病原菌バーティシリウム菌の耐久性器官である菌核は暗黒条件下で強くメラニン化された。そこで、この光条件およびメラニン合成阻害剤をもちいて、メラニン化した菌体と非メラニン化菌体を作成し、両者の耐熱性を比較したところ顕著な差は認められなかった。これらのことから、アカパンカビでは、メラニン合成と耐熱性に強い関連が認められたが、植物病原菌では、両者の関連は必ずしも明確でないと考えられた。
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