2000 Fiscal Year Annual Research Report
糸状菌の菌糸生長・分化におけるキチン合成酵素群の役割分担の解析
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12660066
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀内 裕之 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (00209280)
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Keywords | キチン合成酵素 / 糸状菌 / Aspergillus |
Research Abstract |
我々のグループで単離した糸状菌Aspergillus nidulansのキチン合成酵素遺伝子chsA、chsCはこれまでの研究により、それぞれの単独遺伝子破壊株は野生株と同様の表現型を示すのに対しその二重破壊株は、その生育が各種薬剤に対し高感受性となり、分生子形成効率も野生株の0.01%以下にまで低下することが明らかにされていた。そこで本研究では、このchsA、chsCの二重破壊株の性質についてさらに詳細に研究するため、まずこの株の細胞壁のキチン含量を測定した。その結果、液体培養においてはchsA、chsCそれぞれの単独遺伝子破壊株が野生株の120%、89%のキチン含量を示したのに対しchsA、chsCの二重破壊株のキチン含量は野生株の104%であった。一方、固体培養においてはchsA、chsCそれぞれの単独破壊株のキチン含量は野生株の112%、99%であったのに対し、chsA、chsCの二重破壊株では128%まで増加していた。そこでこれらの株の固体培養の菌糸の超薄切片について透過型電子顕微鏡を用いて観察したところ、chsA、chsCの単独遺伝子破壊株では野生株と同様であったのに対し、chsA、chsCの二重破壊株では菌糸細胞壁が厚く、また隔壁も厚くその中央に存在する隔膜孔が非常に大きくなっていることが観察された。また隔壁の存在する間隔が異常で非常に近接した隔壁なども観察された。このことはchsA、chsCが菌糸細胞壁、分生子形成のみならず、隔壁の形成にも関わっていることを示唆する。 chsC遺伝子と、これまでその機能に不明な点の多いchsD遺伝子の菌糸内での発現部位を特定するためこれらの遺伝子に大腸菌由来のlacZ遺伝子を連結したキメラ遺伝子を作製し、これをA.nidulans内に導入し、その発現をX-galを用いたin situ染色により観察した。その結果、どちらの遺伝子も菌糸中でも発現していたが分生子柄、特にメトレ、フィアライド、分生子において強い発現がみられた。これらのことから、chsC遺伝子産物のみならずchsD遺伝子産物もこれら器官の形成において機能していることが示唆された。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Fujiwara et al.: "Evidence that the Aspergillus nidulans class I and II chitin synthase genes, chsC and chsA, share critical roles in hyphal wall integrity and conidiophore development"Journal of Biochemistry. 127. 359-366 (2000)