2001 Fiscal Year Annual Research Report
糸状菌の菌糸生長・分化におけるキチン合成酵素群の役割分担の解析
Project/Area Number |
12660066
|
Research Institution | THE UNIVERSITY OF TOKYO |
Principal Investigator |
堀内 裕之 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (00209280)
|
Keywords | キチン合成酵素 / 先端生長 / Aspergillus / 分生子形成 / 細胞壁 |
Research Abstract |
我々のグループでは、糸状菌Aspergillus nidulansのキチン合成酵素をコードする遺伝子のうち、一遺伝子破壊では野生株と比較して表現型に変化のみられないchsA、chsC、chsDそれぞれについて、単独遺伝子破壊で菌糸生長に大きな阻害がみられるchsBとの二重変異株の作製を行った。chsBの破壊株は生長が非常に悪く取扱いに困難が伴うことから、まず培地の炭素源によりA.nidulans内で発現の制御可能なアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子(chsA)プロモーターの下流にchsBを置いた株(BM-3)を作製した。この株はchsAプロモーターの発現が誘導される条件ではほぼ野生株と同じ表現型を示したのに対し、発現が抑制される条件では非常に小さなコロニーを形成し、菌糸が太く多分岐であった。このことからもchsBが菌糸生長に重要な機能を持つことが再確認された。またchsBは菌糸生長のみならず,分生子形成にも関わることが明らかになった。次にBM-3株のchsA、chsC、chDをそれぞれ破壊した株(BΔA-3、BΔC-2、DB-13)を作製し、表現型を比較した。chsBはその発現を抑えると、キチン含量が野生株の70%程度まで低下するがDB-13株では野生株の35%程度まで低下した。またDB-13株はchsBの発現のみを抑えた株(BM-3/Al)に比較して高浸透圧に感受性であった。chsDの単独破壊株では野生株と比較してキチン含量,高浸透圧感受性とも変化がみられなかったことから、chsDの機能はchsBの発現がないときにその重要度が増すことが示唆された。一方、BΔA-3、BΔC2では、chsBの発現のみを抑えた株に比べてキチン含量が10%程度上昇していた。また、BΔC2の生育はcalcofluor white、congo red等のキチン結合色素に対してBM-3/A1株に比べて感受性を示した。これらのことからchsCの単独破壊株では野生株と比べてこれら色素に対する生育の感受性が上昇しないことからchsBの発現を抑えた状態ではchscの機能も重要度が増すことが示唆された。
|
Research Products
(1 results)