2001 Fiscal Year Annual Research Report
初期生体防御系におけるストレスシグナル受容体としてのスフィンゴ糖脂質
Project/Area Number |
12660076
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷 史人 京都大学, 農学研究科, 助教授 (70212040)
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Keywords | 熱ショックタンパク質 / 自然免疫 / マクロファージ / 樹状細胞 / NK細胞 |
Research Abstract |
熱ショックタンパク質(hsp)は細胞内において様々なシャペロン機能に関与している他、近年では腫瘍免疫等にみられるような自然免疫系への関与が知られている。しかしhspが自然免疫系の細胞によって認識される機構については不明なところも多い。そこで、本年度は、マウスの誘導型hsp72を用いて自然免疫担当細胞との結合に重要なhspの構造部位を明らかにすることを目的に実験を行い、以下の成果を得た。 まず、hsp72のC末端を順次欠失したd(1-615),d(1-562),d(1-543),d(1-384)とhsp72の全長を合むFullおよび、N末端のATPaseドメインを欠失したd(385-641),d(385-615)をそれぞれ大腸菌により発現させ、これをプローブとして自然免疫担当細胞との結合について検討した。細胞にはDBA/2マウス由来のlymphoid neoplasmであるP388D1細胞と、同系マウス由来のmastocytoma、P815をコントロールとして用い、ビオチン化した各hspとの結合を間接蛍光法によりフローサイトメトリーで検出した。まず、Full, d(1-543),d(1-384)について検討したところP388D1とFullのみが結合し、この結合は飽和曲線に従い、非ビオチン化Fullによってのみ阻害された。さらにd(1-615),d(1-562)およびd(385-641),d(385-615)についても検討したところ、Fullには及ばないもののP388D1細胞と結合した。さらにC57BL/6マウス脾細胞との結合について検討すると、Full、d(385-641)、d(385-615)がそれぞれ全脾細胞の約43%、65%、74%と結合した。さらに、結合した細胞の大半がCD3_εに陰性であるのに対してMHCclass llに陽性であったことから、結合した細胞はT細胞群ではなく抗原提示能を有する細胞群に属することが明らかとなり、これらの細胞の一部のポピュレーションがマクロファージのマーカーであるCD11bおよび樹状細胞のマーカーであるCD11cに陽性を示した。また、マーカーNK1.1陽性のNK細胞への結合も観察された。そこで、チオグリコレート培地のC57BL/6マウスへの腹腔内注射により腹腔滲出性マクロファージを誘導し、hsp72-Full、d(1-384)、d(385-641)、d(385-615)との結合について検討したところ、hsp72-Full、d(385-641)、d(385-615)がCD11b陽性腹腔マクロファージのそれぞれ42%、92%、98%と結合した。以上より、自然免疫担当細胞とhsp72との結合にはhsp72の543残基以後のC末端の構造が重要であるこを明らかにした。
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