2002 Fiscal Year Annual Research Report
樹木個体群における遺伝子流の構造解析と繁殖投資効率の遺伝子流量による評価
Project/Area Number |
12660138
|
Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
川口 英之 島根大学, 生物資源科学部, 助教授 (40202030)
|
Keywords | 個体群 / トチノキ / 繁殖 / 豊凶 / 種子生産 / 開花周期 / 結実周期 / 年変動 |
Research Abstract |
京都大学芦生演習林のモンドリ谷内に生育するトチノキ個体群について、個体ごとの着花数と種子生産数を2002年までの6年間にわたり調査し、着花と結実の年変動を個体レベルと個体群レベルで解析した。また、結実における豊凶、個体間での同調、その要因について検討した。個体群全体の種子生産数は、6年間で大きく変動し、最小と最大の年の間に10倍以上の差があった。豊凶周期は豊作、並作、並作、並作、凶作、並作の順であった。着花数の変動は種子生産数の変動に比べると極めて小さかった。着花数が多いほうが種子生産数も大きい傾向があったが、凶作年においては着花数が他の5年間の平均程度であるのに、種子生産数は非常に少なかった。開花は毎年おこり、しかも着花数の年変動は小さいので、豊凶の決定は開花から結実に至るまでの間におこっていると考えられた。個体レベルでは、多くの個体で着花と結実は大きく年変動し、明瞭な2年周期を示した個体が多くみられた。しかし、2年周期を示した個体のうち豊作年に種子生産を行わなかった個体もあり、個体レベルで豊凶差がみられ、個体群全体で完全しているわけではなかった。個体レベルの結実の年変動に影響する要因として、個体サイズ、種子生産数、モンドリ谷内での位置、渓流から斜面への地形に沿った生育場所をあげ、種子生産数の変動係数とこれらの要因との関係を検討した結果、斜面下部に生育する個体は、斜面中部に生育する個体に比べて、種子生産数の変動係数が有意に大きかった。種子生産の同調度に関係する要因として、開花時期の同調度、個体間の距離、遺伝子の類似度、着花数の同調度をあげ、種子生産数の同調度との相関を求めた結果、個体間の種子生産数の同調度と個体間の距離との間に有意な負の相関があり,種子生産の同調度は、個体間の距離が近いほど強いことが示された。
|
Research Products
(1 results)