2001 Fiscal Year Annual Research Report
魚種特有のイオン環境適応能と塩類細胞の機能の多様性
Project/Area Number |
12660163
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Research Institution | The university of Tokyo |
Principal Investigator |
金子 豊二 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (70221190)
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Keywords | 塩類細胞 / 浸透圧調節 / ティラピア / ウグイ / ウミメダカ / 酸性耐性 / 鰓 / 鰓蓋膜 |
Research Abstract |
ウミメダカやティラピアなどの広塩性魚は、同一の個体が淡水、海水の双方に適応する能力を有している。またウグイはpH4以下の強酸性環境にも耐え得る。このように魚が多様なイオン環境に適応する上で、鰓の塩類細胞が重要な役割を担っている。 1.ウミメダカ:成魚を海水および淡水に1か月間馴致した。鰓および鰓蓋膜の塩類細胞をFITCで標識したNa^+,K^+-ATPase抗体を用いて免疫染色し、レーザースキヤン顕微鏡で観察した。その結果、鰓および鰓蓋膜の塩類細胞は海水群よりも淡水群で大きく発達していた。さらに、鰓の塩類細胞の微細構造を透過型電子顕微鏡および走査型電子顕微鏡で観察したところ、海水中では環境水に接する塩類細胞の頂端部が陥入しピットを形成していたのに対し、淡水中では頂端部がピットを形成せず、微絨毛が発達し表面積が著しく増大していた。また、微絨毛の周辺には数多くの小胞が観察された。これまで塩類細胞は、海水中で大きく発達し体内に過剰となる塩分を排出するという捉え方が一般的であったが、本研究の結果は塩類細胞の淡水中におけるイオンの取込みを示唆するものである。 2.ウグイ:酸性環境に適応したウグイの鰓からNa^+/H^+exchanger(NHE3)をクローニングした。このイオン輸送タンパクはH^+を排出すると同時にNa^+を取込むもので、酸性環境下で発現が高まっている。またNHE3は濾胞状に発達した塩類細胞の頂部側に局在することが、免疫組識化学により明らかとなった。塩類細胞に存在するNHE3は、ウグイばかりではなく魚類全般の酸性耐性メカニズムの本質を担う分子である可能性が高い。 3.ティラピア:淡水飼育したティラピアをpH4.5の酸性環境で飼育したところ、環境水に接する頂端部が著しく拡張した塩類細胞が鰓で頻繁に観察された。このような形態を示す塩類細胞は中性の淡水で飼育した魚では認められず、ウグイの場合と同様に、酸性環境に適応する上で塩類細胞がH^+の排出とNa^+の取込みを行っているものと推察される。
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[Publications] Katho, F.: "Shift of chloride cell distribution during early life stages in seawater-adapted killifish, Fundulus heteroclitus"Zool. Sci.. 17. 11-18 (2000)
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[Publications] Uchida, K.: "Excellent salinity tolerance of Mozambique tilapia"Zool. Sci.. 17. 149-160 (2000)
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[Publications] Kaneko, T.: "Evidence for chloride secretion from chloride cells in the yolk-sac membrane of Mozambique tilapia larvae adapted to seawater"Fish. Sci.. 67. 541-543 (2001)
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[Publications] Katho, F.: "Distinct seawater and freshwater types of chloride cells in killifish, Fundulus heteroclitus"Can. J. Zool.. 79. 822-829 (2001)
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[Publications] Shiraishi, K.: "In vitro effects of environmental salinity and cortisol on chloride cell differentiation in embryos of Mozambique tilapia"J. Exp. Biol.. 204. 1883-1888 (2001)
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[Publications] Kaneko, T.: "Chloride cells during early life stages of fish and their functional differentiation"Fish. Sci.. 68(in press). (2002)
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[Publications] Kaneko, T(分担): ""Eel Biology Chloride cells in Japanese eel (Anguilla japonica) during their early life stages and downstream migration"Springer(in press). (2002)