2002 Fiscal Year Annual Research Report
魚病細菌に対する赤血球膜糖タンパク質グリコホリンの生体防御機能の研究
Project/Area Number |
12660184
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
青木 恭彦 三重大学, 生物資源学部, 助教授 (00212366)
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Keywords | 赤血球膜 / 糖タンパク質 / グリコホリン / シアル酸 / 糖鎖 / 魚類 |
Research Abstract |
平成13年度までの研究で、グリコホリンと種々の病原性細菌の相互作用が電子顕微鏡による形態観察によって明らかとなった。また、グリコホリン糖鎖の構造も電気化学検出器を用いたHPLC法および種々のレクチンに対する吸着能や、核磁気共鳴(NMR)スペクトル(HNMR、CNMR、COSY-NMR、HOHAHA-NMR、HSQC等)より、糖鎖の構造式が推定可能となった。14年度では推定した構造式を確定するためのGC-MS分析を行うため、大量調製した単離糖鎖を用いてメチル化やメタノリシスを行う事とした。 そこで、微量にしか血液中に含まれていないグリコホリンの糖鎖を大量調製するため、コイ血液を約1.5l採取し、遠心式濃縮機で大量に赤血球膜を調製した後グリコホリンを20mg程度抽出し、さらに遊離させた糖鎖を陰イオン交換カラムによるHPLCを用いて100〜200μg程度の糖鎖を分取した。この操作と同時に、各段階で薄層クロマトグラフィーを行って純度の確認を行った。この単離糖鎖標品を用いてメチル化やメタノリシスを行い、調製したGC-MS分析用試料を東レリサーチセンター(株)に解析を委託しており、現在解析の結果待ちの状態である。 さらに前年度では調製できなかった魚病性ウィルスであるIPNの懸濁液を用いてグリコホリンとの親和性も検討したが、凝集反応は確認できなかった。しかしながら、病態魚の赤血球膜を調製した後にSDS-電気泳動を行って健常魚と比較した結果、赤血球膜の構造タンパグ質に変化はなかったが、グリコホリン含量は顕著な減少が観察された。併せて病態魚の血液から単離した細菌を同定した結果、細菌性白雲病のPseudomonas fluorescens(atypical)であった。同定の結果と症状から病態魚の病名を細菌性白雲病と確認した。 以上の結果および平成13年度に行った電子顕微鏡による形態観察により、コイグリコホリンが何らかの生体防御機構に関与している可能性が示唆された。
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