Research Abstract |
1.昨年度に引き続き,普通牛乳を対象として,加工段階の食品安全性情報としてのHACCP表示と生産段階の環境負荷情報を示すエコラベル表示が消費者の購買行動に与える影響を,選択型コンジョイント分析により検討した.今年度は,札幌市,帯広市に加え,千葉県松戸市,大阪府茨木市でもアンケート調査を実施し,それらの回答データに基づいて分析した結果,昨年と同様に,消費者はHACCP表示,エコラベル表示のある牛乳にHACCPおよびエコラベル表示がない普通牛乳に比べ,約1割高い金額を支払う意志があることが明らかにされた.したがって,わが国の消費者は牛乳の安全性だけでなく,環境保全型酪農への誘導を促すグリーン購入志向も有することが確証された. 2.消費者のコメ消費における選好構造をコンジョイント分析により明らかにした.コメの消費行動を促えるうえで重要と思われる産地,品種(コシヒカリ,ノーブランド),栽培方法(有機栽培,減農薬栽培,慣行栽培)に着目し,ネスティッドロジットモデルを大阪府高槻市の住民アンケートデータに適用した結果,消費者は,品種より,新潟産,有機栽培,減農薬栽培といった産地や栽培方法に関心を払って,コメの購入選択を決定していることが明らかにされた. 3.卵のサルモネラ汚染を事例とする支払意志額(WTP)関数の推計から消費者の食品安全性志向とリスク学習過程を検討した.危害に対する個々人の主観的なリスク評価が(WTP)に与える影響について,効用最大化の枠組みに基づいたモデルを開発し,WTPを形成する際のリスク学習過程について分析した結果,個々人は事前的なリスク評価に新しいリスク情報を適応させ事後的なリスク評価を形成するという仮説が支持された.また,事前的リスク評価のウエイトは,多くの場合,新しいリスク情報のそれを下回っていた.
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