2000 Fiscal Year Annual Research Report
中国の畜産経営における飼料消費構造とその穀物自給力への影響の経営経済学的研究
Project/Area Number |
12660204
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
胡 柏 九州大学, 大学院・農学研究院, 助教授 (80248624)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
甲斐 諭 九州大学, 大学院・農学研究院, 教授 (70038313)
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Keywords | 中国 / 飼料 / 穀物 / 食料 / 畜産 / 農業 / 食肉 / 農家 |
Research Abstract |
本年度は2年間研究課題の1年目であり、主要研究事項は、(1)中国の畜産部門別、地域別の食肉生産構造および全国加工飼料の消費構造の解明、(2)中国の零細有畜農家・畜産専業農家の経営実態と飼料消費構造の解明、(3)日本の畜産経営における飼料消費構造分析の3つとしている。(1)についは、本課題に関連する中国の公式統計資料の整理と、飼料業界の資料分析を行った。(2)については、中国黒竜江省、北京市、海南省、雲南省等地域での実態調査を2回実施した。(3)については、日本の畜産経営の動向と飼料企業の需給構造分析などの事項を中心に調査研究を行った。研究はまだ進行中であるが、初年度の調査研究によって次の諸点が明らかになった。 1)中国の食肉生産は地域の資源、穀物生産構造、および食肉貿易構造に大きく依存している。豚肉生産量の約7割は南方地域の14省域に集中し、大陸31省域中の上位5省域だけで4割以上を占めている。牛肉生産量の6割以上は華北と東北の6省域に集中している。鶏肉は山東、広東、江蘇、遼寧等の沿海地域を主産地として生産され、輸出志向型畜産の特徴が鮮明である。 2)輸出や大都市の食肉需要の増大に伴って、大都市周辺や沿海地域での家畜飼育企業および大規模畜産農家が急成長している。これを反映して、加工飼料の生産量は90年代において年7.5%の伸びを示し、1998年現在の配合飼料生産量は5600万トン、つまり米国に次ぐ世界第2位の規模に達している。畜産部門の構造変化や経営形態を反映して、養豚向け飼料の割合は90年代初期の50%から40%に低下している。 3)配合飼料の生産量は巨大な規模になっているものの、中国1年間の食糧生産量に対するその割合が12%に過ぎない。飼料加工向けトウモロコシも、年生産量の1/4程度に留まっている。経営体において購入飼料に依存しない零細有畜農家はなお大きなウェイトを占めているからである。このことは、今後の畜産発展と穀物全体の自給力との関係を考える際に見逃してはならない重要な与件となる。 4)畜産農家の事例調査や関係者の聞き取り調査によると、農家の家畜規模によって飼料消費の構造と効率は大きく異なる。1、2頭の大家畜あるいは数10羽程度の家禽を飼育しているような零細有畜農家の場合は、残飯や農産物の残滓利用が一般的で、飼料の購入あるいは外部依存がほとんど見られない。養豚5頭以上の規模になれば、8割程度が購入飼料に依存せざるを得なくなる。
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