2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12670068
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
近藤 保彦 日本医科大学, 医学部, 助手 (00192584)
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Keywords | 性行動 / 動機づけ / 情動 / 性ホルモン / 扁桃体 / 大脳辺縁系 / エストロゲン / ラット |
Research Abstract |
我々は、初年度、雌ラットの性的動機づけを測定する方法として、雌性行動のペース取り行動(pacing behavior)テストと性的に活発な雄ラットの臭いに対する嗜好性テストについて検討し、さまざまな行動パラメータの相互関係について分析を行った。第2年度として、これらの行動の中枢神経メカニズムを解明するため、これまで性行動に関係することが知られる神経核の破壊効果の検討を開始した。 まず最初に手がけた部位は扁桃体内側核で、我々のこれまでの研究によって、この神経核が雄性行動において発情雌の臭いによる性的興奮(非接触性勃起)に重要であることが示されている。しかしながら、ロードーシスを中心に観察した過去の研究では扁桃体内側核の役割はほとんどわかっていなかった。我々は、卵巣摘除ラットの扁桃体内側核を破壊し、さまざまな容量のエストロゲンを投与してペース取り行動テストと性的嗜好性テストにおける行動を比較した。 扁桃体内側核破壊は、性的に活発な雄に対する嗜好性を消失させた。破壊雌は、去勢雄に対しても性的雄と同じように探索したのである。扁桃体内側核は、主嗅球、副嗅球を介し、嗅上皮、鋤鼻器から化学感覚情報が入力されるため、これらの情報処理に重要な役割を果たしていることが考えられる。 一方、ロードーシスや誘惑行動といった従来からの性行動パラメータについては、扁桃体内側核破壊はまったく効果を示さなかった。それに対して、雄のもとを訪れるまでの潜時は、破壊により有意に短くなった。この効果は、エストロゲンを投与しない条件でもっとも顕著で、発情が強くなるとその差は小さくなった。これらのことから、扁桃体内側核破壊は、非発情状態で雌が示す雄に対する情動反応を低下させるのではないかと仮説をたてた。実際、受動的回避学習課題を与えると、破壊群は対照群に比べて有意に成績が悪かった。したがって、扁桃体内側核は、雄との遭遇場面において情動反応を介して性行動を調節していることが示唆された。 第3年度は、この扁桃体内側核にエストロゲンが直接作用し、情動反応を変化させているのか、さらに実験的に検討を加えたい。あわせて、これまでロードーシスの調節系といわれてきた神経回路について同様な行動テストによる再検討を試みていきたい。
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[Publications] Miura, T., Kondo, Y. et al.: "Electromyography of male rat perineal musculature during copulatory behavior"Urologia Internationalis. 67. 240-245 (2001)
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[Publications] Orikasa, C., Kondo, Y. et al.: "Sexually dimorphic expression of estrogen receptor βn the anteroventral periventricular nucleus of the rat preoptic area : Implication in Iuteinizing hormone surge"Proceedings of the National Academy of Science in the United States of America. (On line)(before print). (2002)
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[Publications] Kondo, Y., Sachs, B. D.: "Disparate effects of small medial amygdala lesions on noncontact erection, copulation, and partner preference"Physiology and Behavior. (In press). (2002)