2001 Fiscal Year Annual Research Report
無重力シミュレーション環境における頸動脈圧反射の感受性に関する研究
Project/Area Number |
12670070
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health |
Principal Investigator |
佐川 寿栄子 産業医科大学, 医学部, 助教授 (20035489)
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Keywords | Head-down tilt / ネックチャンバー / 心肺圧受容器 / 圧反射感受性 / 動脈圧反射 |
Research Abstract |
宇宙から帰還した宇宙飛行士や長期間ベッドで安静にしているヒトでは姿勢変換時耐性が悪く、失神を起こしやすくなることがよく知られているが、その原因は究明されていない。筆者はその原因として無重力環境では血液の頭側シフトが起きるために、心肺圧受容器への負荷量が増大し、このことが動脈圧反射の感受性を低下させて血圧を正常に維持することが困難になるためではないかとの仮説をたてた。本年度はヒトの頭部を水平位以下(15°または30°)に下げて臥床する方法(head-down tilt, HD)を用いて、無重力による中心血液量の増大をシミュレートし、この時の動脈圧反射感受性をネックチャンバー法とシークエンス法の二つの方法で測定した。10人の健康男子被験者(22±0.5才)にHDT0°(コントロール)、HDT15°およびHDT30°をそれぞれ25分間づつ負荷し、最後の15分間、被験者の頸部に装着したネックチャンバーの圧力を+40mmHgから-60mmHgまで一心拍ごとに変化させ、この時のR-R間隔をS字状曲線でフィットさせて圧反射応答を解析した。その結果圧反射の最大ゲイン(感受性)はHDTの程度に依存して増大する傾向を示したが、統計学的には有意差はなかった。また圧反射応答にリセッティングは起きていなかった。一方、シークエンス法で求めた自然な血圧動揺に対する心拍応答の感受性はHDTによる影響は認められなかった。以上からHDTによる心肺圧受容器への負荷刺激は動脈圧反射性の心拍制御の感受性を低下させないことが判明した。本研究は微小重力環境における圧反射感受性を低下させる原因として中心血液量増大は重要な役割を果たしていない可能性を示唆した。
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