2000 Fiscal Year Annual Research Report
老化過程におけるForkhead転写因子とその標的遺伝子の重要性
Project/Area Number |
12670206
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
樋上 賀一 長崎大学, 医学部, 助教授 (90253640)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下川 功 長崎大学, 医学部, 教授 (70187475)
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Keywords | 老化 / 寿命延長 / 食餌制限 / トランスジェニックラット / IGF-1 / DNA array / 肝臓 / Forkhead転写因子 |
Research Abstract |
【研究目的と方法】長期の食餌制限(DR)は、げっ歯類をはじめとする個体の老化速度を抑制し、様々な疾患や腫瘍の発症を抑制、遅延し、寿命を延長する再現性の高い方法であるが、そのメカニズムは未だ解明されていない。しかしながら、近年、DRのこの抗老化・寿命延長作用に成長ホルモン/インシュリン様成長因子(GH/IGF-1)抑制およびそのシグナルの標的であるForkhead転写因子の重要性が示唆されている。本研究では、GH抑制トランスジェニック(ミニ)ラットとwildラット、そのF1ヘテロおよび各々をDRしたラット、計6群の寿命とDNA array法を用いた肝臓での1176個の遺伝子発現プロフィールを比較する事により、個体の老化制御に主要な役割を担う遺伝子群を明らかにし、抗老化・寿命延長作用におけるGH/IGF-1抑制の重要性を検討した。 【結果と考察】34カ月齢現在のラットの生存率は、高い順にF1DR、ミニDR>wildDR、F1自由摂食(AL)>wildAL>ミニALてある。ミニALラットがNK細胞活性が低くいためか、腫瘍発生率が極めて高く、予想に反し短寿命であるが、それ以外5群の生存率はIGF-1レベルと負の相関があり、寿命延長における適度のGH/IGF-1系抑制の重要性を示唆する。一方、1176個中343個の遺伝子が肝臓において発現しており、そのうちDRにより発現が変化する遺伝子は、ストレス応答、脂質代謝関連遺伝子を中心に17個あり、そのうち1/3はIGF-1の変化に依存し、2/3は非依存性であった。F1ヘテロやミニラットのようなGH分泌を抑制したラットに食餌制限を行うことにより、寿命がさらに延長するという事実と遺伝子発現プロフィールを考え併せると、食餌制限による老化制御には、GH/IGF-1依存性および非依存性のメカニズムがあり、後者特にストレス応答関連遺伝子の発現増加と脂質代謝関連遺伝子発現の修飾がより重要であると推定された。今後は、これら遺伝子の転写制御機構におけるForkhead転写因子の関与を検討する予定である。
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