2000 Fiscal Year Annual Research Report
がん転移における血管新生の役割-浸潤能に依存しない転移メカニズムの分子的解明-
Project/Area Number |
12670212
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
杉野 隆 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (90171165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星 暢夫 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (70274959)
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Keywords | がん転移 / 転移モデル / がん浸潤 / 血管新生 / 基底膜 / 細胞外基質 / 遺伝子クローニング / サブトラクション |
Research Abstract |
マウス乳癌から樹立した2種類の転移性細胞株;MCH66とMCH416は組織学的に、転移様式が大きく異なっていた。MCH66は癌胞巣が腫瘍血管に包まれて血中に遊離し、肺にのみ転移するのに対し、MCH416は血管壁を浸潤して血中に入り、広範な臓器転移をきたす。MCH66は非浸潤性に発育し、in vitroでもゼラチン分解活性が極めて弱く、その転移は浸潤能に依存しない新しい様式であると考えられた。この転移の分子機構を明らかにするために、MCH66とMCH416およびMCH66から分離した非転移性クローン(MCH66C8)を比較し、以下の結果を得た。1)腫瘍の増殖速度はin vitroでは3腫瘍ともに同程度であったが、in vivoではMCH66が他の2種よりも極めて高かった。2)移植腫瘍における基底膜形成はMCH66には高度であるのに対し、MCH416には認めなかった。3)Air dorsal sac法を用いたin vivoでの血管新生活性はMCH66が他の2種よりも優位に高かった。4)RT-PCRによる既知の血管新生因子の解析では、PleiotrophinのみがMCH66に特異的に発現していた。5)MCH66対MCH416、MCH66対MCH66C8のSuppression subtractive hybridization(SSH)法を行い、MCH66に共通して強く発現しているmRNA(cDNA)13種(既知遺伝子;9、EST:4)を得た。既知遺伝子には複数の細胞外基質成分が含まれていた。以上より、浸潤能に依存しない転移にはPleiotrophin等による血管新生と種々の細胞外基質が関与している可能性が示された。今後、強制発現によりこのタイプの転移が誘導される遺伝子を同定し、その制御機構を解明していく予定である。
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