2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12670316
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中平 浩人 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 講師 (40217758)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 正治 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (40018693)
|
Keywords | 肺がん / 腺がん / 標準化死亡比 / 標準化罹患比 / 重金属 / 砒素 / 鉛 / ダイオキシン類 |
Research Abstract |
平成3〜11年について、新潟県内の全112市町村別・男女別・年齢階級別・組織型別肺がん罹患者数を、新潟県の許可を得て新潟県がん登録から抽出した。平成7年の国勢調査新潟県人口を基準人口として、2次医療圏別・男女別・組織型別標準化罹患比(SIR)を算出した。その結果、男性は腺がんおよび扁平上皮がん共に、下越地域で特に高いことが判明し、女性は腺がんで同様の結果が得られた。このうち腺がんは、男女ともに特に阿賀野川流域である医療圏で高いことが確認された。扁平上皮がんは、男性では阿賀野川流域以外の下越地域で特に高く、女性では地域集積性は認められなかった。下越地域以外では、上越地域の柏崎圏と中越地域の小出圏で、男性では扁平上皮がん、女性では扁平上皮がんおよび腺がんが有意に高く、注目された。ただ、肺がん組織診断率は、調査期間中約60%であり、さらに詳細ながん登録データを申請の上入手し、地域差の交絡因子を検討する必要があると考えられた。 次に、環境中重金属及びダイオキシン類(PCDD/DFs+コプラナーPCB)濃度測定のため、2湖沼(鳥屋野潟+福島潟)から湖底堆積物試料を80cmの深さまで採取し、鉛210法とセシウム137法によって堆積年代を推定した。1920年頃からの解析が可能となった。濃度分析の結果、砒素は鳥屋野潟で高く、1920年代と70年代にピーク(80〜100PPm)が認められた。鉛は80年代にピーク(80〜90ppm)があり、経年的に増加していた。ニッケル、クロム及びカドミウム濃度は自然界の分布量と同程度で経年変化は認めなかった。発がん過程でプロモーターとされるダイオキシン類の汚染状況は、特徴的であった。PCDD/DFsの毒性等価濃度範囲は鳥屋野潟で14.4〜297.4pg-TEQ/g(平均値99.5pg-TEQ/g)、福島潟で6.6〜45.5pg-TEQ/g(平均値28.7pg-TEQ/g)であり、コプラナーPCBの範囲は0.12〜9.9pg-TEQ/g(平均値4.27pg-TEQ/g)であった。環境庁が行った調査と比較すると、両湖沼ともにダイオキシン類汚染は全国的にも高いレベルであった。そのピークは1970年〜1980年頃であった。年代推定が明確であった鳥屋野潟ではPCDDsの占める割合が大きぐ、ついでPCDFsで、コプラナーPCBの濃度はわずかであった。同族体・異性体の濃度分布は両方の潟で類似していた。主成分分析により汚染起源として2種の水田除草剤(CNP, PCP)と焼却が抽出された。重回帰分析により、毒性等価量の半分以上が除草剤起源であることが判明した。また、コプラナーPCB濃度の経年変化からPCB製品の影響が大きいことが明らかになった。濃度に占める割合は少ないものの燃焼起源の異性体も確認された。以上より、過去20〜30年前に最大のダイオキシン類の汚染があったことが確認された。 過去の重金属およびダイオキシン類汚染状況と肺がんの地域集積性との関連を検討するには、予算の関係で調査地点が限られたことから、今回の調査研究では困難であった。今後、肺がん罹患の組織型別分布の特徴を規定する要因の解明には・調査地点を増やしそれぞれの地点で、時代を遡って関連の疑われる重金属やダイオキシン類汚染の分析を継続することと生体試料中の重金属及びダイオキシン類濃度分析が必要であると考えられた。
|
Research Products
(1 results)