Research Abstract |
環境発がん物質曝露の指標としてのDNA付加体濃度には非常に大きな個人差がある。この個人差の原因として,人が持っている発がん物質曝露に対する防御機構としてのDNA修復機構の影響が考えられる。多環芳香属炭化水素によるDNA付加体は,ヌクレオチド除去修復により修復される。ヌクレオチド除去修復酵素に関して,多型があることが報告されている。ヌクレオチド除去修復に関する酵素は,XPA,XPB(ERCC3),XPC,XPD(ERCC2),XPE,XPE,XPF,XPD,XPG(ERCC5),CSB(ERCC6),ERCC1の酵素群から構成される。Shenらは,ERCC1に7ヵ所,XPDに17ヵ所,XPFに7ヵ所の多型の存在を報告した。そこで,DNA付加体濃度と,修復酵素遺伝子多型との関係を分析し,修復酵素多型がDNA付加体濃度の個人差におよぼす影響を解明する。症例42名から得られたリンパ球DNAからポストラベル法によりDNA付加体を測定した。ヌクレオチド除去修復酵素のうちXPDex23の多型を,PCR-RFLP法で測定した。ex23にA→Cの多型が存在しAA,AC,CC型に分類される。分布は,AA86%,AC14%,CC0%であった。既報と比較し大きな違いを示した。人種差によるものかもしれない。遺伝子多型別のリンパ球DNA付加体濃度を比較すると,AC型で付加体濃度の有意な低下を示した(p=0.048)。AC型は,修復が促進されているかもしれない。Dybdah1らは,皮膚癌患者において,XPD多型との関係を発表している。これによると,AC型は,AA型に比べ発症年齢の遅れを示している。付加体が少ない事と発症年齢が遅い事は理論的には一致すると言えるだろう。
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