2000 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子欠損マウスを用いての水銀毒性に対するメタロチオネインの生理的役割の解明
Project/Area Number |
12670333
|
Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
吉田 稔 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教授 (80081660)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 雅彦 国立環境研究所, 環境健康部, 主任研究員 (20256390)
原 正幸 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 講師 (10198898)
|
Keywords | 水銀蒸気 / 遺伝子欠損マウス / メタロチオネイン / 代謝 / 肺毒性 |
Research Abstract |
近年、水銀は環境ホルモン様作用(内分泌撹乱作用)を有することが報告され、長期間の低濃度水銀蒸気曝露による生殖器や胎児への影響が懸念されている。生体内では重金属に対する共通の防御因子としてメタロチオネイン(金属結合蛋白質)が重金属解毒作用を示すことが動物実験などで証明されている。ヒトでは、メタロチオネイン(MT)の合成能力の低い集団がおり、この集団が一般環境から長期にわたり水銀の曝露を受けた場合の生理的レベルでのMTの生体防御機構としての役割については不明である。本年度は、ジーンターゲッティング法によりMT-Iおよび-IIの発現を抑えたMT遺伝子欠損マウスを用い、水銀蒸気(Hg^0)に対する生理的レベルのMTの役割について検討した。Hg^0曝露後の野生型とMT欠損マウスにおける体内水銀の動態は、水銀の取り込みに差異は見られないが、その後の水銀蓄積は、脳を除き、MT欠損マウスの臓器からの消失速度が速いことが明らかとなった。この相違は体内に取り込まれた水銀は、野生型では、Hg^0曝露によって誘導されたMTに結合するためと思われる。脳では野生型とMT欠損マウスとも曝露直後から水銀はMTに結合していた。とくにMT欠損マウスでは水銀がMT(III型)と結合しているものと考えられ、これら事実はMTが組織中水銀の保持に深く関与していることを示唆する結果であった。高濃度のHg^0を大量に吸入した場合に生じる急性中毒症状の1つである呼吸系への影響については、MT欠損マウスの肺における水銀濃度が野生型マウスに比べ低いにもかかわらず、著しい肺の損傷が認められた。しかも、Hg^0曝露後のMT欠損マウスの死亡率は野生型に比べ、著しく高率であった。肺において水銀は、野生型マウスでは主にMTと結合していたが、MT欠損マウスでは高分子蛋白と結合していた。これらのことは、MTが肺における水銀の毒性に対し、防御作用を示すと共に、肺における水銀蓄積に対しても重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] Yoshida M., et.al.: "Distribution and retention of mercury in metallothionein-null mice after exposure to mercury vapor"Toxicology. 139. 129-136 (1999)
-
[Publications] Yoshida M., et.al.: "Pulmonary toxicity caused by acute exposure to mercury vapor is enhanced in metallothionein-null mice"Life Science. 64.20. 1861-1867 (1999)
-
[Publications] Yoshida M., et.al.: "Prevention of Nephrotoxicity of cisplatin by repeated oral administration of ebselen in rats"Tohoku J.Exp.Med.. 191. 209-220 (2000)
-
[Publications] Satoh M., et.al.: "Renal toxicity caused by cisplatin in glutahione-depleted metallothionein-null mice"Biochem.Pharmacol.. 60. 1729-1734 (2000)
-
[Publications] Satoh M., et.al.: "Modulation of adriamycin toxicity by tissue-specific induction of metallothionein synthesis in mice"Life Science. 67. 627-634 (2000)