2000 Fiscal Year Annual Research Report
痴呆高齢者にとってのバリアフリーと人生の豊かさの再開発
Project/Area Number |
12670375
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
福島 哲仁 福岡大学, 医学部, 助教授 (90208942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永幡 幸司 福島大学, 行政社会学部, 助教授 (50312765)
嘉悦 明彦 福岡大学, 医学部, 助手 (70248483)
守山 正樹 福岡大学, 医学部, 教授 (10145229)
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Keywords | 痴呆 / 高齢者 / バリアフリー / クオリティ・オブ・ライフ / コミュニケーション / 音 / 記憶 |
Research Abstract |
島根県出雲市にあるデイケア施設では、痴呆性高齢者がサイコドラマに参加し、生きる自信を回復しようとしている。中等度から重度の痴呆症を持つ15人の高齢者を観察し、これらの高齢者は痴呆症にもかかわらず豊かな人間性を発展させていることがわかった。不安や混乱から引き起こされるトラブルは、デイケアのプログラムにより消失し、痴呆性高齢者自身および彼らをとりまく環境への自信が生まれている。痴呆性高齢者の家族に対するインタビューを行い、痴呆症にかかることで、これまで隠されていた人間性が表面に現れてくることがわかった。家族および痴呆性高齢者自身による"記憶障害の受容"は、初期のトラブルを解消し、本来の人間性を呼び覚まし活性化するのに必須であり、このダイナミックなプロセスを促進するケアスタッフの視点、役割が重要である。今を幸福に生きるということが痴呆性高齢者にとって確かに重要であるが、人間性を発展できる将来への自信が、クオリティ・オブ・ライフを高める上でさらに重要であると考えた。 痴呆性高齢者の生活環境を議論する場合、音の効果を無視することはできない。どのような種類の音が記憶され、呼び起こされるのかを明らかにした。調査がデイケアのプログラムの一環として位置づけられるよう、スタッフと綿密な打ち合わせを行い、協力して実施した。ケアリーダーが、擬声語が書かれている画用紙大のカードを示し、その擬声語を繰り返し読み、この擬声語が何の音を示しているかを自由に話し合った。この結果、(1)自然の中にある音、鳥の声や雨の音のような擬声語は、性を問わず容易に回想される(2)台所で聞いた仕事の音は女性で鮮明に回想される(3)古い生活習慣に関連したものほどはっきりと回想される(4)生活史と強く関連した音は、非常によく回想されることがわかった。これは、痴呆性高齢者が、かつて非常に慣れ親しんだ音を容易に回想できることを示している。
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