2001 Fiscal Year Annual Research Report
急性大動脈解離例のintimal tearに関する病理学的研究
Project/Area Number |
12670404
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
村井 達哉 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (80129692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬傷 美年子 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (20286446)
齋藤 一之 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (10215535)
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Keywords | 大動脈解離 / 突然死 / 行政解剖 / 人体病理学 |
Research Abstract |
前年度に引き続きStanford A型急性大動脈解離による突然死剖検例のintimal tear(IT)につき病理学的検討を行った.前年度はDeBakeyI型とII型におけるITの部位や形態の差異を検討したが,今年度は冠動脈の解離合併例におけるITの病理学的特徴につき検討した.我々はすでに急性大動脈解離による突然死の直接死因として解離腔破裂による出血,特に心嚢内出血が重要であることを指摘したが,解離腔破裂を欠く突然死例では冠動脈解離,特に左冠動脈解離による急性心筋虚血が重要であることも報告した. そこで今回はStanford A型解離例のうち,左冠動脈解離を伴う13例のITについて,冠動脈解離を伴わない131例との比較検討を行った.その結果,冠動脈非解離例ではITが上行大動脈の右〜前壁上半に認められることが多いのに対して,左冠動脈解離例では左〜後壁(一部右側壁)の弁輪直上部にITが認められることが圧倒的に多いことが示され,左冠動脈解離の合併はこのようなITの存在部位の特異性に起因している疑いか強いことがわかった. さらに今年度は,ITの近傍における大動脈壁の基礎病変について組織学的に検討した.StanfordA/B型計170例を検索したところ,大多数においてIT近傍では所謂cystic medionecrosis(中膜弾性線維の巣状の脱落と酸性ムコ多糖の沈着)の像が観察された.また,3例には多核巨細胞を伴う著明な肉芽腫性動脈炎がみられ,中膜の弾性線維が著明に破壊されていた.なお,中膜平滑筋の層状壊死は,慢性解離合併部を除き認められず,解離に伴う二次的な虚血性病変と考えた.これらのことから,大動脈解離の発生には弾性線維の脱落を伴う中膜病変による壁の脆弱性が基礎病変として重要であると考えられ,次年度において定量的評価をすべく準備中である.
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