Research Abstract |
平成12年度は本研究の基本をなす貴重な知見を多く得ることができた。 <臨床的観点>門脈圧亢進症性胃症(portalhypertensive gastropathy:PHG)は内視鏡的にsuperficial reddening(SR),snake skin appearance(SSA),cherry red spot(CRS),diffuse hemorrhage(DH)を呈するが、胃内所見は一様でなく、また各所見と背景肝障害の進展度について検討した。【対象と方法】慢性肝炎(CH)19例,肝硬変(LC)68例と物理的門脈閉塞を伴う肝硬変(vp)20例を対象とした。胃内の上,中,下部における内視鏡的PHG所見を、McCormackの分類に準じ、最も進行した病変に従ってSR,SSA,CRS,DHで評価した。肝障害および門脈圧亢進の進展度との関係を、PT,血小板数,spleen index,食道胃静脈瘤所見で検討し、vp例は独立した群として対比した。【成績】PHGは慢性肝炎で68%,LC(Child A,B,C)で各86.2,86.6,93.8%に認められ、vp例では全例陽性であった。CHからChild A-Cの進展に伴い、中,上部でのSSA,CRSの頻度が段階的に増加する傾向にあった。vp群では下部でSRが60%を占めたが、上部ではDHが50%であった。SR,SSA,CRS,DH所見と肝機能の検討では、PT82.9±6.0,80.6±2.7,69.2±2.7,74.0±6.6%,血小板18.0±6.3,13.3±1.3,9.1±1.1,9.4±1.1万/mm3,spleen index 4794±1312,462±351,5741±357,6704±799であった。F2以上の食道静脈瘤の発生頻度は14.3,34.5,52.9,44.4%、胃静脈瘤は0,28.6,48.5,50.0%であった。【結語】PHGは肝障害の進展に伴い胃上部で強く発生し、内視鏡所見上のCR以上でPT,血小板の低下とspleen indexの上昇およびF2以上の食道静脈瘤と胃静脈瘤の出現頻度の増加傾向がみられた。 <実験的観点>Wistar系ラットに対し、四塩化炭素/オリーブ油当量混合液を2/週×12週間皮下注射し、ラット肝硬変モデルを作成した.麻酔下に断頭堵刹し、血液,肝臓,胃を速やかに採取した。胃粘膜と肝につきデジタルカメラで撮影後、胃粘膜病変を画像解析(Quantimet600 Image Processing and Analysis System:Leica)に供した。結果肝硬変ラットでは粘膜病変の発生が有意に高く単位面積に占める割合は0.60±0.25%であった。現在も実験を継続中である。
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