2000 Fiscal Year Annual Research Report
ヘリコバクターピロリの胃粘膜内線維芽細胞増殖、分化におよぼす影響の検討-胃潰瘍、胃ガン形成との関連-
Project/Area Number |
12670539
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Research Institution | Kitasato Institute |
Principal Investigator |
中村 正彦 (社団法人)北里研究所, 基礎研究所, 研究員 (30155858)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 秀和 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (70255454)
高橋 信一 杏林大学, 医学部, 教授 (10137953)
松井 英則 (社団法人)北里研究所, 基礎研究所, 室長補佐 (30219373)
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Keywords | ヘリコバクターピロリ / 線維芽細胞 / 筋線維芽細胞 / cyclooxygenase II / 塩基性線維芽細胞増殖因子 / 血小板由来増殖因子 / transforming growth factorβ / endothelin |
Research Abstract |
胃潰瘍症例生検組織およびスナネズミのヘリコバクターピロリ(Hp)持続感染モデルにおいてこの筋線維芽細胞と微小循環系の変化を検討した。その結果、胃潰瘍症例においては、活動期胃潰瘍では、慢性胃炎症例では観察されない円形あるいは紡錘形のPR 2D3抗体およびrhodamine-phallodin陽性の筋線維芽細胞が潰瘍辺縁に多数出現し、治癒期、瘢痕期には筋線維芽細胞は、小型化し、その数も減少した。また、腸上皮化成部ではその数はさらに減少していた。cyclooxygenase II(COX II)免疫活性は、そのほとんどがこの筋線維芽細胞上に局在していた。一方、Hp持続感染スナネズミにおいては、感染1年後までの観察では、3ヶ月後をpeakとして筋線維芽細胞の増大が観察され、胃潰瘍症例と同様にCOX II免疫活性が認められた。また、第8因子およびCD34,36による内皮細胞、FITC-dextran加agarの経大動脈カテーテルからの注入による血管透過性の検討からは、粘膜先端部での微小循環系の拡張、増生および血管透過性の亢進が明らかとなり、上皮細胞にHpが接着することにより、筋線維芽細胞、微小循環系などの間葉系細胞が増加することが明らかとなった。そこで、この増加の機序を明らかにする目的で、この細胞における各種増殖因子(塩基性線維芽細胞増殖因子basic fibroblast growth factor:bFGF,血小板由来増殖因子PDGF-AA,BB,transforming growth factor β)およびendothelinに対する受容体の分布をin vitro autoradiography法により検討した。その結果、bFGF,PDGF-BB,endothelin-1が筋線維芽細胞および微小循環系内皮細胞に結合することが明らかとなり、これらの因子がその増殖に関与することが示唆された。また、vitaminA投与によりこの筋線維芽細胞に対する集積が認められたことから、この細胞は伊東細胞あるいはfat-storing cellに類縁した細胞であり、vitaminA投与がその増殖の抑制に関与することが示唆された。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] M.Nakamura,H.Matsui,K.Tsuchimoto and H.Ishii: "Alteration of gastric mucrocirculatory architecture during healing of acetic acidinduced ulcer and helicobacter pylori infection"J.Gastroenterol.Hepatol.. (in press). (2001)
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[Publications] 中村正彦,松井英則,土本寛二,井上淳,織田正也,石井裕正: "Hp感染Mongolian gerbil 胃底腺における壁細胞、粘液頸細胞の変化"胃分泌研究会誌. 32・1. 43-46 (2000)
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[Publications] 中村正彦,松井英典,秋葉保忠,栗原直人,北島政樹,織田正也,石井裕正: "消化管培養細胞に対するH.pylori接着様式検討-共焦点レーザー顕微鏡による観察-"Ther.Res.. (in press). (2001)
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[Publications] 中村正彦,岸川浩,土本寛二,石井裕正: "ラット胃底腺粘膜内における3H-cimetidine結合部位の再評価。"Ther.Res.. 21・Sup1. S49-S56 (2000)
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[Publications] M.Nakamura,H.Kishikawa,H.Ishii,N.Kumagai and K.Tsuchimoto.: "Autonomic nervous regeneration in acetic acid-induced ulcer formation from the viewpoint of synapse formation -effect of basic fibroblast growth factor and sofalcone in the rat."Aliment.Pharmacol.Ther.. 14・Sup.1. 50-57 (2000)
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[Publications] 中村正彦,岸川浩,土本寛二,織田正也,石井裕正: "酢酸潰瘍再生粘膜微小循環系の特徴-AV shunt形成およびbFGFの効果-"Ulcer Research. 27・1. 57-59 (2000)