Research Abstract |
【目的】肺線維症,胎生期肺における肺胞上皮細胞の再生および新生に,IV型コラゲナーゼであるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-2が重要であることが指摘されている。そこで,MMP-2ノックアウトマウス(KO)と野生型マウス(WT)でブレオマイシン肺線維症を作成し,両者を対比し,肺胞の再生期におけるMMP-2の役割を明らかにする。【方法】KOとWTに気道よりブレオマイシンを投与し,経時的に両者を対比し,光顕的,電顕的に観察した。光顕的に線維化の程度をAshcroft法にて定量化した。また,肺組織のhydroxyproline定量,gelatin zymographyによる活性化,Western blottingによるMMP-2の定量を行った。【成績】コントロールでは,両者ともに正常肺が観察された。ブレオマイシンによる線維化は,間質細胞の肺胞腔内への侵入,細胞外基質の産生・沈着により形成されることが明らかにされているが,Ashcroft法,hydroxyproline定量ともに,線維化の程度は両者に差が無く認められた。Gelatin zymographyにおいて,WTでは1週から3週にMMP-2の明らかな増加,活性化がみられ,免疫組織化学では,再生肺胞上皮細胞にMMP-2の陽性所見が観察された。KOでは,線維化巣を被覆する肺胞上皮細胞の減少,細胞質の膨化,球状化が観察され,代わりにマクロファージが線維化巣を被覆していた。後期では,KOにおいて,線維化巣の再構築,治癒の遅延が認められた。肺胞上皮細胞の増生は,PCNAにて両者に同様に認められた。また,肺胞領域の気道上皮細胞の再生移動像であるbronchiolizationは,両者に差が無く認められた。【考察・結論】MMP-2の欠損により,肺胞上皮細胞は肺胞上皮基底膜から離れることが出来ずに球状化するものと考えられた。肺胞上皮の移動による肺胞腔内線維化巣の被覆にMMP-2が必須であることが明らかとなった。
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