2001 Fiscal Year Annual Research Report
心房細動の発生、持続および停止のメカニズムにおける心房筋の3次元的電位特性の関与
Project/Area Number |
12670660
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Research Institution | SHIGA UNIVERSITY OF MEDICAL SCIENCE |
Principal Investigator |
伊藤 誠 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (70159911)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 喜久 滋賀医科大学, 医学部, 助手 (30216337)
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Keywords | Fibrillation / Spiral wave / Scroll wave / Computer simulation / Rotational anisotropy / Rreakthrough wave / Ion channel / Functional reentry |
Research Abstract |
細動の発生および持続様式を検討するため、昨年度に引く続きコンピュータシミュレーションを用い詳細な検討を行った。細動の本態は渦巻き波(spiral wave,SW)であるが、細動の持続性に関してはSWの新たな発生とSWの分裂およびSW消失のバランスの上で成り立っていると考えられる。2次元平面で心筋線維方向に不均一性(rotational anisotropy)が存在するとSWが分裂し易いという平成12年度に得られた実験結果を元に平成13年度では更に3次元でのSWの動態を検討した。その結果、厚さのある左室ではSWの分裂が指数関数的に増加し、心室表面へのbreakthroughも増えるのに対し、壁の薄い右室ではSWの分裂はしにくくまたbreakthroughも見られない、即ち右室では細動はおきにくいことが示唆された。更に、rotational anisotropyが強くなると左室ではSWの分裂およびbreakthrough現象がより著しくなることを証明し論文発表した。 一方、SWの発生・分裂には線維方向以外の要素も関与しているが、その中でもSW中にafterdepolarizationが出現する現象が認められ、これが更にSWの新たな発生や分裂に関与していることを実験的に証明し論文発表した。SWの発生や分裂を抑制に関与する因子としては、心筋細胞のイオンチャンネルがある。臨床的に心房細動の治療にしばしば使用される3群薬や1A群薬では心筋細胞のKチャンネルを抑制する作用があるが、Kチャンネルを抑制するとSWの分裂が抑制され、更に興奮波前面が媒質の端に衝突して消滅したり、媒質の中ほどで行き場を失って自然消滅するパターンが証明され、Kチャンネルの抗細動作用の有効性が理論的にも証明されこの結果を報告した。 心房細動症例での検討では、細動症例では心房内に電位の非常に小さい部位即ち瘢痕(scar)が存在する場合が多く、心房内の伝導にも明らかな不均一性(anisotropy)が認められた。また心房細動症例では、心房内腔も拡大しており空間的にもSWの起こりやすい素因がある。細動の発生には瘢痕周囲を旋回する心房内リエントリから心房細動に移行する場合以外に、心房の他の部位からの新たな興奮波の発生、更には最近注目されている肺静脈からの自動興奮も関与していることが分かった。 このように、心房細動の発生・持続のメカニズムは個々の症例で異なることが示唆され、電気的除細動のメカニズムを含め今後更に基礎的、臨床的研究を遂行する必要性があると思われた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Ashihara T, Yao T, Namba T, Kawase A, Ikeda T, Nakazawa K, Ito M: "Afterdepolarizations promote the transition from ventricular tachycardia to fibrillation in a three-dimensional model of cardiac tissue"Circulation Journal. 66・5(in press). (2002)
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[Publications] Ashihara T, Yao T, Namba T, Ito M, et al.: "Electroporation in a model of cardiac defibrillation"Journal of Cardiovascular Electrophysiology. 12・12. 1393-1403 (2001)
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[Publications] Ashihara T, Namba T, Ikeda T, Ito M, Kinoshita M, Nakazawa K: "Breakthrough waves during ventricular fibrillation depend on the degree of rotational anisotropy and the boundary conditions: A simulation study"Journal of Cardiovascular Electrophysiology. 12・3. 312-322 (2001)
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[Publications] Ito M, Sugimoto Y, Yagi T, Ashihara T, Yao T, Yamada N, Matsuo S, Kinoshita M, et al.: "Dispersion of QT interval reflects but transmural dispersion of repolarization may not correlate with sympathetic neural imbalance in congenital long QT syndrome"PACE. 24・4. 628 (2001)
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[Publications] Yao T, Ashihara T, Ito M, Namba T, Toda S, Ikeda T, Kawase A, et al.: "Ion channel modifications alter virtual electrode-induced reentry"The 7th Asian-Pacific Symposium on Cardiac Pacing and Electrophysiology. (2001)
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[Publications] 芦原貴司, 難波経豊, 池田隆徳, 伊藤 誠, 川瀬綾香, 八尾武憲, 杉本喜久, 八木崇文, 戸田 直, 稲垣正司, 杉町 勝, 木之下正彦, 中沢一雄: "心室壁表面で観察されるspiral waveの自発的分裂様式と心筋線維構造:コンピュータシミュレーションによる検討"心電図. 21・4. 470-480 (2001)