2001 Fiscal Year Annual Research Report
心線維化におよぼす細胞特異的TGF-βシグナル伝達分子機構の解明
Project/Area Number |
12670679
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
芦澤 直人 長崎大学, 医学部・附属病院, 講師 (10301368)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
塚崎 智雄 長崎大学, 歯学部, 助教授 (50315230)
矢野 捷介 長崎大学, 医学部, 教授 (50039864)
瀬戸 信二 長崎大学, 医学部・附属病院, 講師 (00136657)
山下 俊一 長崎大学, 医学部, 教授 (30200679)
大津留 晶 長崎大学, 医学部, 助手 (00233198)
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Keywords | 心線維化 / 心肥大 / TGF-β / ノルエピネフリン / MAPK / Smad / Ca拮抗薬 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
心肥大では心筋細胞の肥大のみならず、心線維芽細胞の増殖や間質の線維化が認められる。近年、肥大心における局所Angiotensin IIやアルドステロンが直接、あるいはTGF-βの産生を促すことにより線維化に関与していることが報告されている。そこで、種々の臓器において線維症の重要なサイトカインであるTGF-βと、心不全の病態でその産生・分泌の亢進するノルエピネフリン(NE)との関わりについて、MAPK系および近年同定されたSmad系を含めたTGF-βのシグナルに着目し、新生仔SDラット初代培養系を用い、以下の検討を行った。 1.WST assayを用いた細胞増殖:心線維芽細胞においてTGF-β(1ng/ml)、NE(10-5M)単独投与によりそれぞれ増殖し、両者の同時添加でさらに増殖は亢進した。一方、肝細胞癌細胞株(HepG2)ではTGF-βにより細胞増殖は約70%抑制された。2.Western blotによる細胞外マトリックス蛋白の発現:Fibronecctin, Collagen I, PAI-1の発現は心線維芽細胞においてTGF-β(1ng/ml)、NE(10-5M)単独投与によりそれぞれ増加し、両者の同時添加でさらに発現は亢進した。3.ルシフェラーゼレポーターシステムを用いた転写調節レベル:(1)3TP-Luciferase [3TRE(TPA response element)+PAI-1 promoter]:TGF-β(1ng/ml)、NE(10-5M)単独投与により心線維芽細胞ではそれぞれ転写活性は2〜3倍増加し、両者の同時添加では約10倍に亢進し相乗効果が認められた。またこの相乗効果はdominant negative TGF-βII型受容体により完全に抑制された。一方、心筋細胞では相加効果が認められたにすぎなかった。(2)ARE(activin response element)-Luciferase:心線維芽細胞においてFAST-1(forkhead activin signal transducer-1)の存在下でTGF-β(1ng/ml)投与により転写活性は有意に増加した。しかしその増加レベルはHepG2に比較すると僅かであり、またNEによる相乗効果も認められなかった。(3)AP-1(activating protein-1)-Luciferase:心筋細胞においてTGF-β(10ng/ml)、NE(10-5M)単独投与により転写活性は約5倍に、両者の併用で約10倍に増加した。この相加効果はカルシウム拮抗薬(nifedipine 10-7〜10-5M)により濃度依存的に抑制される傾向が認められた。また、β-blocker(propranolol 2x10-6M)ではほとんど影響を受けずにα-blocker(prazosin 2x10-6M)により有意に抑制された。 以上の結果より、1.心線維芽細胞においてノルエピネフリンはTGF-βのシグナルに対し相乗的に働き、それはTGF-βの受容体を介していた。また、そのシグナル伝達はSmad系よりもMAPK系の方が強く関与していた。2.心筋細胞の肥大に関して、TGF-βとノルエピネフリンは相加的に作用しており、この効果はカルシウム拮抗薬により部分的に抑制された。また心筋細胞の転写因子AP-1を介した肥大には、α-受容体がβ-受容体よりも強く関与していた。
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