2002 Fiscal Year Annual Research Report
肝癌発生過程における低酸素の役割の実験的研究と臨床研究
Project/Area Number |
12670901
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
岸 和史 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教授 (70254547)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 守男 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (50154109)
谷畑 博彦 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (30347596)
覚道 健一 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (00112037)
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Keywords | 肝癌 / HIF / ラット / 低酸素 |
Research Abstract |
ラットに4塩化炭素肝炎肝硬変発生モデルでの実験の大半が前年度で終了した。しかしこの内容の学内検討会では結論には慎重を期するべきとして再試験を行うことになった。したがって本年度には、方針を変更して、4塩化炭素肝炎肝硬変発生モデルをもう一度おこなうこととなった。クラーク酸素電極による測定では1回目の実験同様1週目から4週目まで4塩化炭素投与群では肝臓内部が低酸素状態になり、ついで低酸素からの回復が生じたので一度目の実験結果が支持された。またHIF1αも1回目同様4週目から上昇が見られ以後持続して発現が見られた。HIF1βの発現は対照群と4塩化炭素投与群で代わりがなかった。しかし肝臓固定標本のHE染色所見は肉眼観察結果と一致せず、支配血管の交代でなく、すべて静脈側の変化であり、炎症の初期には静脈周囲の細胞の死滅があり、その肝静脈は細くなることがわかった。この細小化は肝血流の悪化を、"虚脱"という形で反映していると考えられる。"虚脱"の時期は肝実質内部の酸素の低下時期と一致した。肝実質内部の酸素の低下時期はHIF上昇に転じた時期に一致した。考案:硬変肝となる過程としての炎症反応の時期には静脈側における虚血性の肝細胞死、その後再生、再構築の過程でも、還流障害が生じている時期があり、その結果低酸素状態が続くが、改善にむかうことが推測される。発癌のプロモータとも言われるHIF1の発現は、この過程が肝炎や肝硬変からの発癌に関与していることを示唆する。
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