超音波検査による下肢静脈血流および弁機能の解析―静脈疾患危険因子の同定―

2001 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 12670908
• Research Institution: Nippon Medical School
• Principal Investigator: 保坂 純郎 日本医科大学, 医学部, 講師 (90229162)
• Keywords: 静脈 / 下肢静脈 / 静脈弁機能 / 静脈疾患 / 超音波検査 / 下肢静脈瘤 / 深部静脈血栓

Research Abstract

1正常人における生理的な下肢静脈血流と、呼吸、腹圧のそれに及ぼす影響、および弁機能を評価した。健常人10肢を対象とし、仰臥位にて上半身半挙上した体位で、下肢全域の静脈を超音波検査した。呼吸もモニターし、静止像、動画像を記録することにより、弁描出能、弁形態、平常呼吸時の血流状態と弁挙動、腹圧上昇時の血流を検討した。結果は、全肢全域で弁の描出と血流評価が可能だった。平常呼吸時の血流は呼吸性の変動を呈することが多く、腹圧上昇時にも著明な逆流はなかった。以上から、超音波検査で静脈弁と血流の正確な評価は下肢全域で可能で、呼吸の大腿静脈血流に対する影響と弁による逆流の阻止が明らかとなった。
2静脈弁機能不全の静脈疾患発生への関与を検討するため、下肢静脈撮影で確定診断の得られた深部静脈血栓症例9肢と静脈瘤症例6肢で同様の検討を行った。結果は、血栓症例の1肢を除く全肢で弁の消失または短縮化が見られた(P<0.01、対正常群、以下同様)。弁の開閉は全肢不明瞭だった。腹圧上昇時、全肢に1秒以上続く逆流が観察され(P<0.01)、静脈断面積の10%以上の増大は血栓症例肢の半数(3/6、P=0.2)、静脈瘤症例全肢(4/4、P=0.01)で観察された。以上から、静脈弁機能不全と静脈疾患発生の強い関連性が示唆された。
3以上の成果をもとに、下肢静脈瘤患者にたいしての画像検査の第1選択は超音波検査となり、手術予定の有無に関わらずほとんど全例に対して超音波検査が施行されている。また手術に当たっては大伏在静脈と不全穿通枝のマーキングもルーチンとなっている。また術後の深部静脈血栓の検索も極めて頻繁に行われるようになっている。

Research Products

• [Publications] 保坂 純郎: "高性能超音波装置による静脈弁機能の評価-正常例と下肢深部静脈血栓症例および下肢静脈瘤症例の比較-"静脈学. 12・1. 71-76 (2001)
• [Publications] 保坂 純郎: "静脈系疾患の画像診断とIVR-四肢静脈疾患の画像診断-"臨床画像. 17・10. 1176-1186 (2001)
• [Publications] 保坂 純郎: "下肢静脈超音波検査-静脈弁の描出と機能評価-"Vascular diseases and therapies update. 5. 1-3 (2001)
• [Publications] 保坂 純郎: "CRによる検査・診断の落とし穴5-造影検査,診断のポイント"INNERVISION. 15. 56-59 (2000)
• [Publications] 保坂 純郎: "MR hydrography と MR angiography vol2"Medical View.