2001 Fiscal Year Annual Research Report
精神分裂病におけるHLAおよび神経発達障害に関連する遺伝・環境要因の解析
Project/Area Number |
12670926
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 司 東京大学, 保健管理センター, 助教授 (50235256)
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Keywords | 精神分裂病 / HLA / 神経発達障害 / 出生季節性 / 遺伝 / 環境 / 感染症 / 地域差 |
Research Abstract |
分裂病発病の少なくとも一部において感染・免疫機能が一定の役割を果たしていることは、慢性関節リューマチとの関連、患者における免疫機能変化、分裂病患者における出生季節の偏りから強く示唆されている。この機序をできるだけ具体化し、またさらに詳細な証拠を示すことが、本研究最大の目的である。昨年度はこれまで検討されてこなかった東日本以外の日本人populationで分裂病のHLAの分布がどのようになっているかを知るため、長崎県でリクルートした対象についてHLA-classIの分布を調べた。その結果、以前関東を中心とする地域の対象で報告されたA24、A26の分裂病における増加は長崎の対象では見られないことが明らかとなった。また、日本人の分裂病患者でも欧米と同様の出生季節性パターンが見出されるかを東京周辺の患者を対象に検討した。その結果、出生季節の偏りは男性で主に見られること、東京周辺の対象では夏生まれによる分裂病発病リスクの減少は明らかだが、冬生まれによるリスク増加はそれほど目立たないことが明らかになった。このため出生地域による違いを検討するため、東北地方出身の患者ではどのような分布を示すかの検討を開始した。 今年度の研究では、これらの結果を受けてさらに関東周辺でリクルートした対象について、HLAclass-1で最も関心高いA座についての検討を行った。その結果、以前に報告されたA24、A26の増加は確認されなかった。増加は出生季節を考慮に入れても確認されなかった。すなわちHLAclass-IIのDR1の増加が80年代から最近まで繰り返し観察されているのとは対照的に否定的結果に終わった。特にA24はDR1とハプロタイプを形成することから注目していたが、長崎の対象での結果とあわせると、'日本人の分裂病患者では特定のHLA-classIの頻度が変化しているという証拠は得られないと結論づけられた。なお、HLA領域内または近傍の有力な候補遺伝子としてTNF、Notch-4などについても検討しているが、現在のところ有意な結果は得られていない。出生季節性に関しては、昨年度より東京周辺の患者での分布とともに、東北地方で出生した患者での分布の検討をさらに進めた。その結果、冬季の気候が厳しい東北地方出生の患者では冬季出生による将来の分裂病発病リスクが高くなること、リスクの増大は男性で強いことが確認された。今後は、これらの結果を受けて、HLA-class-IIの再検討、HLA近傍の候補遺伝子、それ以外の免疫関連遺伝子についての解析をさらに進め、それぞれについて出生季節との関連の検討を行いたい。また出生季節の分布については、東北地方など寒冷地域での対象をさらに増やすとともに、それ以外の地域での検討も行うため、現在国内複数施設との共同研究を進めている。
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