2001 Fiscal Year Annual Research Report
事象関連電位発現における大脳皮質神経活動の関与:ラットを用いた電気生理学的研究
Project/Area Number |
12670969
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Organization for Medical Research |
Principal Investigator |
榛葉 俊一 財団法人東京都医学研究機構, 東京都精神医学総合研究所, 副参事研究員 (80175398)
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Keywords | 前頭葉 / 内側無顆粒皮質 / 神経発火 / 脳波 / 覚醒 / 注意関連弁別課題 / 事象関連電位 / ラット |
Research Abstract |
近年、ラットの前頭葉の一部である内側無顆粒皮質は、霊長類の前頭眼野に対応し、注意機能に関連することが示唆されている。そこで、大脳皮質の中でも内側無顆粒皮質に焦点を当て、神経発火と脳波や事象関連電位発現との関連を検討した。 昨年度は、freely movingラットを用い、慢性記録電極を内側無顆粒皮質に留置し、神経発火と表面脳波とを同時記録した。両者の関連を解析し、内側無顆粒皮質神経発火が注意・覚醒機能と密接に関連する青斑核神経発火と相反的な活動を示すことより、内側無顆粒皮質の注意・覚醒機能への関与を報告した。本年度は、実際に注意関連弁別課題をラットが遂行中に、内側無顆粒皮質神経発火やフィールド電位を記録し、事象関連電位発現との関連を解析した。 二音弁別oddball課題では、ラットの頭部を脳定位的に固定した状態で、内側無顆粒皮質において神経発火と事象関連電位を同時記録した。刺激には10KHz音(低頻度標的音)と5KHz音(高頻度非標的音)を用い、低頻度10KHz音の呈示後2秒以内のレバー押しに対して報酬として練り餌を一滴与える訓練をした。32個のニューロン活動を記録した結果、10/32の神経発火は、低頻度標的音に対して発火頻度の上昇を示した。発火頻度上昇は音呈示後100-615ミリ秒の間持続した。発火上昇のピークは表面P100成分に対応した。皮質内のP100成分は、表面より有意に大きな振幅を呈した。高頻度非標的音に対しては著明な反応は認められなかった。これらの結果はラットの内側無顆粒皮質が刺激の弁別に関与し、事象関連電位の発現に関連していることを支持するものであった。 予告付き条件づけ課題では、freely movingの状態で、10KHzと5KHzの純音を1:1の頻度でrandomに呈示し、10KHz音(標的音)のみに対して、呈示1秒後に、弱いfoot-shockを床グリッドに与えた。1セッション中、音は平均14秒間隔で一時間呈示した。課題を3日ごとに続け、訓練過程および完成後に、内側無顆粒皮質において表面脳波と皮質内フィールド電位の記録をとった訓練を重ねるとともに、皮質表面において、標的音に引き続きfoot-shcck提示まで持続する、陰性の事象関連電位が形成された。皮質内での電位差出現もみられ、内側無顆粒皮質が、予告付き条件づけ課題時の事象関連電位発現にも関わることが示唆された。来年度もこの実験を積み重ね、知見をまとめていきたい。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Toshikazu Shinba: "Spontaneous and auditory-evoked activity of medial agranular cortex as a function of arousal state in the freely moving rat : interaction with locus coeruleus activity"Brain Research. 887・2. 293-300 (2000)
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[Publications] Toshikazu Shinba: "Medial agranular cortex activity related to event-related potential generation in the rat."Cognitive Brain Research. (in press). (2002)