2001 Fiscal Year Annual Research Report
糸球体疾患における糸球体上皮細胞の形質転換と各種転写因子発現についての研究
Project/Area Number |
12671019
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大高 徹也 東北大学, 医療技術短期大学部, 助教授 (70271921)
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Keywords | 半月体性腎炎 / 糸球体上皮細胞 / 形質転換 / サイトケラチン / 転写因子 / 細胞周期調節蛋白 |
Research Abstract |
本年度は、半月体性腎炎の管外病変における、上皮細胞の形質転換を免疫組織学的に検討し、あわせて糸球体破壊の過程との関連を検討した。この目的で、半月体性腎炎45例を対象に、腎生検標本の連続切辺を用いた酵素抗体法により、上皮性細胞骨格蛋白(vimenntin(以下Vim)、各種cytokeratin(以下CK))の発現および各種転写因子(WT1、Pax2)と細胞周期調節蛋白(p21、p27)の発現を免疫組織学的に検討した。 昨年度報告した如く、正常群糸球体上皮細胞の骨格蛋白発現に関しては、臓側上皮(足細胞(以下P上皮))および壁側上皮(Bowman嚢上皮(以下B上皮))にVim発現が、また一部のB上皮のみに各種CK(CK8、CK18、CK19)発現が見られた。また、各種転写因子発現に関しては、P上皮にはWT1、P27及びP21の発現が、またB上皮にはWT1、Pax2の発現が観察された。 半月体性腎炎45例での検討でも、構造の保たれた係蹄では、P上皮、B上皮のCK発現様式および転写因子発現様式は正常腎と同様であった。管外病変では、主に細胞性半月体に一致して、Vim、CK8、CK18、CK19のみが発現しており、他のCK発現は見られなかった。各種転写因子の発現に関しては、細胞性半月体に一致して、WT1、Pax2、p21の核発現が認められたが、p27は消失していた。以上のように、CK発現様式と転写因子発現様式から、細胞性半月体を構成する細胞はB上皮に極めて近い形質を有していると考えられたが、同時にP21の発現も見られ、細胞増殖に伴う何らかの転写調節の変化が示唆された。さらに、半月体性腎炎の管外病変の進行時期を分類するため、各糸球体の半月体を細胞性、線維細胞性、線維性の3群に分け、CK、VimおよびPCNA発現と進行時期との関連を検討した。CK発現とPCNA発現は細胞性半月体で最も強く、以後は減弱した。Vim発現は線維細胞性半月体で最も強く認められた。本症の半月体形成には、上皮細胞の形質転換を伴う増殖能獲得が関与しており、病期の進行と共に更に形質を変化させていることが示唆された。 これらの結果は、それぞれ第44回日本腎臓学会学術総会及び第34回アメリカ腎臓学会で発表した。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Ohtaka A., Sato T., Ootaka T., Sato H., Saito T., Soma J., Ito S.: "Significance of the early phenotypic change of podocyte as detected by Pax2 in primary focal segmental glomerulosclerosis (FSGS)"American Journal of Kidney Diseases, in press. (2002)
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[Publications] Kimura T., Ootaka T., Ohtaka A., Sato H., Ito S: "The expression of cytokeratin polypeptides, WT1 and Pax2 in human crescentic glomerulonephritis"Journal of American Society of Nephrology. Vol.11. P110A-P110A (2001)
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[Publications] 木村朋由, 大高徹也, 大高亮彦, 佐藤寿伸, 小倉祥之, 佐藤 博, 伊藤貞嘉: "半月体形成性糸球体腎炎(CresGN)におけるcytokeratin subtype及びWT1,Pax2発現の検討"日本腎臓学会誌. 43巻3号. 285-285 (2001)
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[Publications] 大高徹也, 大高亮彦, 木村朋由, 佐藤博, 伊藤貞嘉, 佐藤寿伸, 斉藤喬雄: "各種増殖性糸球体腎炎における糸球体細胞の転写因子発現について"日本腎臓学会誌. 43巻3号. 285-285 (2001)