2000 Fiscal Year Annual Research Report
cDNAアレイ法を用いた急性腎不全における経時的遺伝子発現プロファイルの決定
Project/Area Number |
12671026
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野入 英世 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (00301820)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳永 勝士 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40163977)
中尾 彰秀 東京大学, 医学部・附属病院, 講師 (10159056)
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Keywords | 急性腎不全 / 虚血再灌流 / ヒト近位尿細管細胞 / 低酸素-再酸素化 / cDNAアレイ法 |
Research Abstract |
はじめに急性腎不全の臨床では「発症が何時か?」が不明なことが多く基礎実験での成果を充分に生かすことができなかった。本研究では、客観的な評価基準としてアレイ法を導入し、遺伝子発現のパターンにより急性腎不全が可逆的か不可逆的かを検討中である。 本年度の成果虚血再灌流障害は、近位尿細管細胞障害が病態の首座であることより、ヒト近位尿細管細胞HKC-8を用いて実験を行った。HKC-8の機能的な点が不十分であるため、これをまずこの検討を行ない、HKC8はNa^+/H^+exchanger、Cl^-/HCO_3^-exchanger及びNa^+-HCO_3^-cotransporterを有することを証明した(ref1)。次に、虚血再灌流障害のin vitroモデルの開発を行った。当初低酸素化には酸素濃度5%のインキュベーターを用いたが、細胞障害が不十分であったため、嫌気バック法に切り替えた。低酸素化時間は約8時間以上で細胞障害を生じることが確認された。また再酸素化によりcell monolayerの回復が約2〜4時間で生じることが低酸素化時間12時間まで確認され、これ以上の低酸素化時間では不可逆的に転ずることを確認した。 上記実験条件におけるHKC-8のtotal RNA10μgをAGPC変法で抽出し、DNase処理後、泳動で18S・28SのbandをSYBR Green IIで確認の上逆転写しcDNAを得た。ここでアレイを行ったところ十分なシグナルの差が検出されにくく、ターゲットのコピー数の割合を変えずに増幅する目的で、20〜25サイクルでPCR後ターゲットをプローブにハイブリッドさせたところ、HKC-8においてもnon-RIのシステムで十分検討できることが確認された。現時点までで588のヒトゲノムについて解析終了し、不可逆的な低酸素化では、Interleukin系やGlutathione系、Integrin系、MAP kinase系のup-regulateが確認され、細胞周期やDNA修復に関与するゲノムでdown-regulateが確認された。現在ゲノム解析数を3000へ増やし、また可逆的変化との比較検討中である。 考察アレイ解析に低サイクルのPCRのステップを入れる点は議論の分かれるところである。我々は最終目標は腎移植後のfollow-upでの腎生検などで近位尿細管障害が可逆的か不可逆的かを検討することにあり、限られたターゲットから最大限の情報量を引き出すことが要求されるため、敢えてPCRを入れる手法を導入している。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Hara C,Satoh H,Usui T,Kunimi M,Noiri E, et al.: "Intracellular pH regulatory mechanism in a human renal proximal cell line (HKC-8) i evidence for Na^+/H^+exchanger,Cl^-/HCO_3^-exchanger and Na^+-HCO_3^-cotransporter"Pflugers Arch. 440. 713-720 (2000)
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[Publications] Noiri E,Yokomizo T,Nakoo A, et al: "An in vivo approach showing the chemotactic activity of leukotriene B_4 in acute renal ischemic-reperfusion injury"Proc Natl Acad Sci USA. 97. 823-828 (2000)
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[Publications] Tsukahara H,Noiri E,Jiang M-Z,Hiraoka M,Mayumi M: "Role of nitric oxide in human pulmonary microvascular endothelial cell adhesion"Life Sci. 67. 1-11 (2000)
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[Publications] Noiri E,Taguchi J,Nakao A,Fujita T: "MTHFR gene polymorphism as an exacerbation factor of diebetic nephropathy in type 2 diabetes"Diabetes Care. 23. 260 (2000)
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[Publications] 野入英世: "急性腎不全の発症機序"小児内科. 32. 856-863 (2000)
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[Publications] 野入英世: "急性腎不全と細胞内エネルギー代謝"腎と透析. 49. 359-363 (2000)