2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12671048
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
林 晃一 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (80164937)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大久保 建 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (30286455)
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Keywords | 慢性腎不全 / RhoA / Rhoキナーゼ / 高血圧 / 蛋白尿 |
Research Abstract |
近年の研究により、RhoAならびにRhoキナーゼが血管トーヌスのみならず、血管肥厚、動脈硬化など幅広い領域にわたる病態生理活性を有することが明らかにされた。すなわち、新しく開発されたRhoキナーゼ阻害薬(Y-27632)は、高血圧自然発症ラットの全身血圧を低下させることが報告されている。さらにRhoAが細胞増殖や、血管内皮での一酸化窒素合成酵素の誘導、インスリン感受性にも影響し、RhoAの生体内で血管緊張作用のみならず細胞増殖等多方面にわたる重要な役割が示唆されている。一方、RhoAおよびRhoキナーゼ作用を、腎血管トーヌス、細胞増殖、内皮機能等にわたる腎障害の進展の観点から検討した研究はない。 本年度の研究ではRhoAキナーゼ抑制薬を用い、腎におけるRhoAの病態生理作用を検討した。部分腎摘を高血圧自然発症ラットに施し、慢性腎不全モデルを作成した。その後Rhoキナーゼ阻害薬であるfasudil(3mg/日,腹腔内注射)を連日8週間投与した。実験経過中は2週間ごとに収縮期血圧・蛋白尿の定量を行い、実験最終日には血液生化学成績および腎組織を評価した。 まず、部分腎摘による腎不全モデルの作成では、血圧は上昇を示し(149±3から217±14mmHg)、著明な蛋白尿を呈した(21±1から124±16mg/day)。一方、Fasudilの連日投与群では、血圧は非投与群と差異を認めなかったが、蛋白尿の増加を有意に抑制し(26±3から79±12mg/day)、腎病変として糸球体病変ならびに尿細管間質病変のスコアも改善を示した。さらに、腎組織内のRhoキナーゼ蛋白およびphosphorylated MBSは部分腎摘にて増加を示し、fasudilの投与により後者は減少を示した。これらの変化には細胞増殖に深く関わるとされるP27^<kipl>の増加を伴っていた。 以上の結果より、部分腎摘の伴う腎障害の進行において、Rhoキナーゼが活性化を受けることが明らかとなった。この活性化を抑制することが、腎障害進展抑制が発揮される可能性が示唆された。腎障害に対する、カルシウム拮抗薬などの従来の薬剤は降圧と関連することが重要な作用であるが、本研究によりRhoキナーゼは血圧に関連しない腎保護作用の存在が強く示唆された。
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Research Products
(1 results)