2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12671068
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Research Institution | Saitama Medical School |
Principal Investigator |
清水 浩 埼玉医科大学, 医学部, 助教授 (90260843)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小俣 真 埼玉医科大学, 医学部, 助手 (70286045)
荒川 浩 埼玉医科大学, 医学部, 助手 (90271238)
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Keywords | 肺サーファクタント / 胎便吸引症候群 / 細胞膜障害性 / サーファクタントサブタイプ転換 / 溶血度 |
Research Abstract |
前年度までのin vitroでの研究からは、胎便のサーファクタントサブタイプ転換促進作用が証明されていた。今年度は新生仔ブタ胎便吸引症候群(MAS)モデルを用いて、in vivoの実験系で胎便のサーファクタントサブタイプ転換促進作用の証明を試みた。日齢0の新生仔ブタに20%ヒト胎便5ml/kgを経気道的に投与してMASモデル(n=6)を作製した。対照群(n=9)には同量の生理食塩水を投与した。人工換気を6時間行った後に、気管支肺胞洗浄液(BALF)を回収した。このBALFの低速遠心上清を、さらに超遠心(40000×g、15分間)にて上清[small surfactant aggregates(SA)に相当]と沈渣[large surfactant aggregates(LA)に相当]に分離した。それぞれのリン脂質量からサーファクタントサブタイプの構成を検討した(SA/LA比)。さらに上記LA(リン脂質として1.2mg)にsurface area cycling(in vitro)を行い、サブタイプ転換率(%conversion)を算出した。BALF中のSA画分はMAS群で有意に増加していた(SA/LA比0.20±0.02%vs.0.09±0.01%、P<0.001)。またMAS群のLAはsurface area cyclingで容易にSAに転換された(%conversion:82±2%vs.59±3%、P<0.001)。以上の結果から、胎便はin vivoにおいても、サーファクタントサブタイプ転換を促進することが示された。またMAS群のsurface area cyclingによる転換率促進から、LAそのものが質的に変化している可能性が示唆された。 今年度はまた、赤血球をモデル細胞として、赤血球溶血の面から胎便の細胞膜障害性の検討を試みた。成人ボランティア7名からEDTA採血し、生理食塩水にて洗浄操作を行い洗浄赤血球を得た。胎便は30%(w/v)濃度の胎便溶液(凍結保存)を0〜0.3%の濃度範囲で生理食塩水で希釈して、洗浄赤血球(30μl)に添加した。この胎便添加赤血球(総量2ml)を間欠的に混合しながら、37℃で1時間のインキュベーションを行った。その後、超遠心(5000×g、30分間)を行い、上清の吸光度(540nm)を測定、さらにシアンメトヘモグロビン法にて総ヘモグロビン量を測定した。評価は赤血球に蒸留水を添加して、完全溶血を起こした液を陽性対照として、溶血度(%)を計算した。胎便添加の有無でヘモグロビンの吸光スペクトルに変化はなかった(ピークは540nmと576nm)。赤血球溶血度は胎便濃度が0%、0.015%、0.03%、0.045%、0.09%、0.18%、0.3%の時、それぞれ28±9%、15±3%、13±2%、15±3%、29±12%、52±12%(P<0.001、対0%胎便)、57±10%(P<0.001、対0%胎便)の溶血度を示した。また、胎便濃度0.18%の時、赤血球溶血度は0分、15分、30分、45分、60分のインキュベーションの間に3±4%、15±4%、24±8%(P=0.045、対0分間)、33±8%(P=0.005、対0分間)、36±8%(P=0.003、対0分間)と増加した吸光度(540nm)、シアンメトヘモグロビン法いずれの評価法でも同様の結果が得られた。以上の結果、胎便の濃度ならびに時間依存性に赤血球溶血を促進することが証明された。すなわち、胎便の細胞膜障害性が赤血球溶血の面から証明された。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] 清水 浩, 荒川 浩, 李 光薫, 他: "わが国における先天性肺胞蛋白症、先天性SP-B欠損症の患者発生:新生児希有疾患(病態)サーベイランス事業報告"日本未熟児新生児学会雑誌. 15・1. 107-111 (2003)
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[Publications] 荒川 浩, 清水 浩, 小川雄之亮: "高頻度振動換気が幼若家兎肺サーファクタント代謝に及ぼす影響"臨床呼吸生理. 34・2. 111-114 (2002)
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[Publications] Shimizu H, Lee G, Arakawa H, et al.: "Alternatively spliced surfactant protein B mRNA in congenital alveolar proteinosis in Japan"Am J Respir Crit Care Med. 165. A78 (2002)
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[Publications] Obata M, Shimizu H, Ohama Y, et al.: "Altered pulmonary surfactant subtype in a newborn piglet model of meconium aspiration syndrome"Am J Respir Crit Care Med. 165. A79 (2002)