2001 Fiscal Year Annual Research Report
CDK抑制蛋白の過剰発現による平滑筋細胞増殖抑制の試み
Project/Area Number |
12671094
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
浦澤 一史 北海道大学, 医学部・附属病院, 助手 (00280850)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 聡 北海道大学, 医学部・附属病院, 講師 (90291228)
岡本 洋 北海道大学, 医学部・附属病院, 講師 (50260394)
|
Keywords | CDK抑制蛋白 / 細胞周期 / 血管平滑筋 / 遺伝子治療 |
Research Abstract |
平滑筋細胞増殖の分子機構を検討することは、動脈硬化や冠動脈形成術後再狭窄の機序を明らかにする上で重要である。本研究では、静止期に同調培養した血管平滑筋細胞に、血清添加による増殖刺激を加えた後、経時的に細胞周期関連蛋白の発現量とその活性変化を検討した。その級ハ、増殖刺激後早期にCDK抑制蛋白(p57Kip2, p27Kip2)が減少し、引き続いてcyclin-D/cdk4,cyclin-E/cdk2活性が亢進し、Rb蛋白のリン酸化とE2Fの遊離が引き起こされていることが示された。増殖刺激後まずp57Kip2の蛋白量が減少し、それに伴いcyclin-D依存性cdk活性の亢進があり、やや遅れてp27Kip1の蛋白量の減少とcyclin-E依存性cdk活性の亢進が観察された。この間、Rb蛋白ファミリーの中のp107,p130のリン酸化が徐々に進行した。一方、p110(Rb)については、本研究で用いたラット腹部大動脈以来平滑筋細胞株(A10)における発現量は極端に少なく、また、血清による増殖刺激によってもリン酸化が認められなかった。以上の結果から、CDK抑制蛋白、特にp57Kip2が細胞周期回転の制御機構の最上流に位置することが推測された。この点を確認する目的で、アデノウイルスを用いてp57Kip2を強制的にA10細胞に発現させると、増殖刺激によるp27Kip1の減少は抑制され、その後のcyclin-cdk活性亢進、Rb蛋白リン酸化も抑制された。以上の結果から、血管平滑筋細胞においてはp57Kip2減少が細胞周期回転の最初の引き金となっていることが明らかとなった。本研究において作成したp57Kip2発現アデノウイルスの投与により、内膜損傷に伴う血管平滑筋細胞増殖が著明に抑制されることが、動物実験で確認されており、冠動脈形成術後再狭窄に対する遺伝子治療への応用も可能と思われる。
|