2002 Fiscal Year Annual Research Report
生体肝移植におけるドナー血門脈内投与における免疫抑制剤からの完全離脱
Project/Area Number |
12671147
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Research Institution | NIIGATA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
佐藤 好信 新潟大学, 医学部附属病院, 助手 (20313538)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 智 新潟大学, 医学部附属病院, 助手 (30345508)
渡部 久実 琉球大学, 遺伝子実験センター, 教授 (50143756)
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Keywords | Living-related liver transplantation / Chimerism / NKT cell / CD56^+T cell / DST / portal tolerance / Oral tolerance / Immonosoppression |
Research Abstract |
平成12年度から本研究において以下の観点から研究目的に沿って検討した。(1)ヒトにおける肝内リンパ球の特徴とグラフト灌流における動態、(2)肝移植後早期の肝内外リンパ球キメリズムについて、(3)ドナー血門脈内投与効果の細胞性免疫からの解析、(4)ドナー血門脈内投与効果の液性免疫からの解析、(5)ドナー血門脈内投与の免疫抑制剤への臨床効果について検討した。 (1)われわれは肝内リンパ球に血流に抗して肝内に留まりやすいresident leukocyteと肝外にWash outされやすいpassenger leukocyteに分けられる仮説を発表している。グラフト灌流前後では、肝内に多く存在するNK細胞や、NKT細胞のなかでもCD56+T細胞が肝内に留まりやすく、胸腺分化T細胞がWash outされやすいことが分かった。(2)移植後早期のドナーリンパ球の動態をFACSやshort tandem repeat法で検討した。末梢血内のドナーリンパ球は24時間以内にほとんどレシピエントタイプのリンパ球になっていることが判明した。しかし移植直後の末梢血には約10%のドナータイプのリンパ球が存在することも分かった。移植後早期非常にdynamicな免疫系の動きがあり少なくとも24時間以内に末梢血中では、アロの反応によってドナーリンパ球はeliminateされることが分かった。逆に肝移植では多くのドナーリンパ球が、抗原として末梢血中に提示されることも分かった。肝内リンパ球についても95%以上のドナーリンパ球が、1週間以内にレシピエントタイプに置き換わることが判明した。(3)ドナー血門脈内投与効果の細胞性免疫からの検討では、上記のように非門注群では1週間で肝内リンパ球がほとんど置き換わるのに対し、門注群では6週間後でもグラフト肝内にドナータイプのCD56+T細胞が17%存在していた。これはCD56NKT細胞のみで他のCD57NKT細胞は顕著ではなかった。また胸腺分化のconventional T細胞はほとんどレシピエントタイプに置き換わっていた。(4)液性免疫からのドナー血門脈内投与効果の検討では、門注群で第1病日で血中IL-10レベルが非門注群に比し有意に高値を示した。ヒトにおいてもTh2が免疫寛容に関与している可能性が示唆された。またリンパ球クロスマッチ陽性患者は液性拒絶反応が起こり予後が悪いことが報告されているが、陽性患者にドナー血門注を施行しFACSリンパ球クロスマッチ解析を行ったが、術後早期IgM, IgGサブクラスIgG1、IgG3、IgG4は強陽性となったが、189病日には全て陰性となっていた。この患者では拒絶反応は認められなかった。ドナー血門注がクロスマッチ強陽性患者に対してもイディオタイプネットワークセオリーによる抗体中和など、何らかの抑制的な働きをした可能性が考えられた。(5)臨床上のドナー血門注効果では、ほとんどの症例で約1ヶ月前後でステロイド完全離脱が可能であった。また免疫抑制剤FK506についても有意に早期の減量が可能であった。拒絶反応においても門注群でその頻度は少なかった。今後新たなRATGを使用したドナー血門注のレジメを検討中である。
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