2001 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12671159
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
八木 孝仁 岡山大学, 医学部・附属病院, 助手 (00304353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 紀章 岡山大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (10127566)
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Keywords | subzero nonfreezing preservation / anti-nucleating protein / ascorbic acid 2-glucoside / liver transplantation |
Research Abstract |
(目的)移植肝グラフトの保存性の向上を目指し、抗氷晶核蛋白(anti-nucleating protein : ANP)を用いた0℃以下、非凍結での過冷却(subzero nonfreezing : SZNF)保存の有効性とアスコルビン酸誘導体(ascorbic acid 2-glucoside : AA-2G)の過冷却保存傷害の抑制効果をラット肝移植モデルを用いて検討した。 (方法)過冷却保存効果の安定化のためバクテリア由来のANPをUW(University of Wisconsin)液に添加、過冷却保存での類洞内皮傷害を抑制するためにAA-2Gを抗酸化剤として用いた。雄性Wistarラットを使用、グラフト肝の保存条件により、以下の3群に分類。コントロール群:UW液で4℃保存、SZNF(ANP)群:UW液にANP 20μg/mlを加え、-3℃過冷却保存、SZNF(ANP+ AA-2G)群:UW液にANP 20μg/ml、AA-2G 100μg/mlを加え、-3℃過冷却保存。各々の保存条件で24時間保存後、レシピエントラットに同所性に移植、再灌流4時間後に犠牲死させ血清ALT、ヒアルロン酸(HA)、胆汁産生量、グラフト肝ATP量、グラフト肝類洞内皮細胞のTUNEL陽性細胞数、グラフト肝の透過電顕像について比較検討した。 (結果)コントロール群に比し、SZNF(ANP)群はALT、HAの上昇を認めたが、SZNF(ANP+ AA-2G)群では有意に抑制された。胆汁産生量はSZNF(ANP)群ではコントロール群に比し減少したが、AA-2G添加により有意に改善した。肝ATP量はSZNF(ANP)群ではコントロール群より高値を示したが、SZNF(ANP+ AA-2G)群ではさらに有意に増加した。類洞内皮細胞のTUNEL陽性(アポトーシス)細胞数は、SZNF(ANP)群ではコントロール群に比べ有意に増加していたが、SZNF(ANP+ AA-2G)群ではコントロール群と比ぺても有意に減少していた。透過電顕像では、24時間保存直後のグラフト肝はいずれの群においても類洞内皮細胞の剥脱円形化が認められた。再灌流4時間後のグラフト肝では、SZNF(ANP)群にAA-2Gを添加することにより類洞内皮細胞の再接着が観察された。 (結論)UW液にANPを添加することにより、安定した過冷却保存状態が実現可能であった。過冷却保存はアポトーシスに起因する類洞内皮細胞の冷保存再灌流傷害を増強させたが、AA-2Gはその類洞内皮細胞傷害を抑制しグラフト肝のviabilityを向上させた。類洞内皮細胞傷害抑制物質を用いることにより、肝過冷却保存が従来の4℃単純冷保存に優る肝保存法となる可能性が示唆された。
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