2002 Fiscal Year Annual Research Report
真性膵嚢胞の病理学的本態に関する組織化学的・遺伝子学的研究
Project/Area Number |
12671254
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Research Institution | JICHI MEDICAL SCHOOL |
Principal Investigator |
永井 秀雄 自治医科大学, 医学部, 教授 (00164385)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗原 克己 自治医科大学, 医学部, 助手 (20275697)
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Keywords | pancreas / IPMT / MCT / clonality / X chromosome inactivation / PGK / K-ras |
Research Abstract |
【背景と目的】画像診断の進歩に伴い嚢胞性膵病変が無症状で多数発見されるようになったが、嚢胞性膵病変の臨床的鑑別診断は必ずしも容易ではない。とくに「粘液産生膵腫瘍」(国際的には膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMT))・粘液性嚢胞腫瘍(MCT)は、組織学的本態が曖昧で、同一の病変ですら病理学者によって診断が異なることがある。病理診断が不確実であると、臨床診断・手術適応も不確かなものになる。そこで、IPMTおよびMCTの病理学的本態(腫瘍性or非腫瘍性)に迫るべく遺伝子学的検索を試みた。 【対象と方法】IPMTおよびMCT切除例のうち、クロナリティ解析が可能であった女性は11例(IPMT7,MCT4)であった。ホルマリン固定標本から各異型度(grade0-3)の上皮を選択的に採取し、DNAを抽出・精製した。クロナリティ解析はX染色体上PGK遺伝子のメチル化による不活化を利用して行った。制限酵素非消化で2本のPCRプロダクトバンドが消化後1本になればmonoclonal(mono)、2本のままならばpolyclonal(poly)と判定した。K-ras変異はコドン12についてnested PCR法で検討した。 【成績】IPMTでは、1例を除き異型度のgradeによつて上皮のクロナリティは異なっていた。則ち、大部分の例はgrade0においてpolyclonalityを示し、異型度が増すごとにmoncclonalityとなった。gradeごとにmonoclonalityの出現頻度をみると、grade0では29%、grade1では33%、grade2では100%、grade3でも100%であった。MCTでは、1例でgrade0がpoly、grade1と2がmoncconalであった。K-ras変異に関してはIPMTではgradeが増大するにつれて上昇し、grade0で0%、grade1で33%、grade2で50%、grade3では75%であった。controlの上皮に変異はみられなかった。MCTでは変異はなかった。なおクロナリティとK-ras変異は、相互関係に一定の傾向は認められなかった。 【総括】 1.IPMTでは異型度が増すにつれmonoclonality、K-ras変異の頻度は増加した。 2.MCTは、異型の乏しい上皮のみから成るものでは、polyclonalな細胞集団であり、非腫瘍性の可能性も示唆された。IPMTとの異同は明らかにできなかった。 3.monoclonalityとK-ras変異との関係では、monoclonalityはK-ras変異よりも早期の段階で腫瘍化に関与する可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)