2002 Fiscal Year Annual Research Report
左室肥大心筋における虚血再灌流障害の発生機序と過分極心停止法による心筋保護
Project/Area Number |
12671316
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Research Institution | 佐賀医科大学 |
Principal Investigator |
夏秋 正文 佐賀医科大学, 医学部, 助教授 (90075557)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
力武 一久 佐賀医科大学, 医学部, 助手 (80295047)
伊藤 翼 佐賀医科大学, 医学部, 教授 (10110496)
岡崎 幸生 佐賀医科大学, 医学部, 講師 (80203975)
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Keywords | 心筋虚血再灌流障害 / 冠動脈内皮障害 / 心筋保護 / 開心術 / 人工心肺・体外循環 / カリウムチャンネル開口薬 / 蛋白分解酵素阻害剤 / 肥大心筋 |
Research Abstract |
背景と目的:心臓外科手術における術中心停止中の心筋保護法の進歩により、心臓外科手術成績も向上してきた。しかしながら、特に長時間の心停止を要する場合や心筋肥大症例など危険因子のある症例で、開心術後心不全のために補助循環を要したり、あらゆる努力も報われず死亡する症例も存在する。そこで、開心術中の心筋保護法による心停止、虚血再灌流障害を動物実験において行い、その虚血再灌流障害に関わる白血球と内皮障害に関して解析し、その軽減策を、白血球除去フィルター血再灌流、蛋白分解酵素阻害剤投与、カリウムチャンネル開口薬を用いて検討した。 方法:ウサギ摘出心をランゲンドルフ回路で灌流し、左室内にラテックスバルーンを挿入しバルーンを拡張させ左室拡張末期圧に対する収縮力で評価する実験モデルを確立した。潅流液は従来のクレプス液では白血球やサイトカインなどの因子にかけるので、サポートアニマルを用いた交叉循環回路とし血液を灌流した。摘出心のベースラインデータとして収縮力などを測定後、臨床開心術に準じてセントトーマス液を30分毎に投与し4時間の心停止とした。この間もサポートアニマルの血液をランゲンドルフ回路に灌流し続け開心術での人工心肺による白血球の活性化を模擬的に行った。この活性化された白血球を含む血液を4時間の心筋保護液による心停止後再灌流し、心収縮力を測定、冠動脈内皮障害を走査電子顕微鏡で解析した。 結果:左室収縮力は4時間の心筋保護液による心停止前に比べ約40-50%に低下した。冠動脈内皮は剥離脱落が目立った。白血球除去血で再潅流すると、収縮力は80%程度にまで改善し冠動脈内皮障害は顕著に軽減された。また、蛋白分解酵素阻害剤であるウリナスタチンを投与すると、収縮力は80%程度まで回復し、冠動脈内皮障害も軽減された。ナファモスタツトメシレートを投与すると収縮力は70%程度まで回復し冠動脈内皮障害も軽減された。カリウムチャンネル開口薬のニコランジルを投与すると、収縮力は75%程度に回復し、冠動脈内皮障害も軽減された。さらに、選択的好中球エラスターゼ阻害剤であるジベレスタットナトリウム投与でも収縮力が改善し冠動脈内皮損傷も軽減された。 総括:長時間の心停止を要する場合、現在の心筋保護法では、左室収縮力低下や冠動脈内皮障害を防ぐには不十分である。虚血後再灌流の際、人工心肺で活性化された白血球が再灌流障害を増長していると考えられる。各種薬剤の投与方法とその効果を明らかにし、臨床応用することが重要である。左室肥大例では短時間の心停止でもより顕著な左室収縮力障害、拡張障害が懸念され、更なる検討が必要である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Natsuaki M, Itoh T, Okazaki Y, Rikitake K, et al.: "Evaluation of postoperative cardiac function and long-term results in patients after aortic valve replacement"Japanese Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery. 48. 30-38 (2000)
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[Publications] Cao ZL, Okazaki Y, Natsuaki M, Itoh T, et al.: "Ulinastatin attenuates reperfusion injury in the isolated blood-perfused rabbit heart"Annals of Thoracic Surgery. 69. 1121-1126 (2000)
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[Publications] Okazaki Y, Cao ZL, Rikitake K, Natsuaki M, Itoh T, et al.: "Leukocyte-depleted reperfusion after long cardioplegic arrest attenuates ischemia-reperfusion injury of the coronary endothelium and myocardium"European Journal of Cardiothoracic Surgery. 18. 90-97 (2000)
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[Publications] Okazaki Y, Takarabe K, Rikitake K, Natsuaki M, Itoh T, et al.: "Coronary endothelial damage during off-pump CABG related to coronary-clamping and gas insufflation"European Journal of Cardiothoracic Surgery. 19. 834-839 (2001)
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[Publications] Natsuaki M, Itoh T, Okazaki Y, Takarabe K, Furukawa K, et al.: "Influence of St.Jude medical valve in patients with aortic stenosis and small aortic annulus on cardiac function and late survival result"Artificial Organs. 26. 840-846 (2002)
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[Publications] 岡崎幸生, 財部京実, 力武一久, 村山順一, 夏秋正文, 伊藤翼: "人工心肺回路の走査電子顕微鏡による観察"膜型肺. 25. 22-25 (2002)