Research Abstract |
昨年度に引き続き吻合方法の違いの評価をin vitroで行った.グラフト径2mm,冠動脈径3mmの設定で吻合角45度の端側吻合法(ESAs(45)),側側吻合法(SSAs),吻合角0度の端側吻合法(ESAs(0))の3種類をシリコンモデルを作製した.このシリコンチューブを模擬回路に接続し,生理食塩水を作動流体とし,前負荷を100mmHg,流量を10mL/min刻みで120mL/minまで変化させ,その際のグラフト流入部及び吻合部より遠位側の冠動脈圧を計測し圧力損失を計算した.定常流による測定を行いESAs(45),SSAs,ESAs(0)の順で圧力損失係数が増加する結果となり,ESAs(45)はSSAsに比べ22%,SSAsはESAs(0)に比べ26%低値を示した.しかしながら拍動流下での実験では,大動脈平均圧が100mmHgの時,エネルギー損失が,ESAs(45),ESAs(0),SSAsの順で低値を示した.これは拍動流の場合,変数が多数存在するため,より信頼性の高い解釈及び評価を行うために,実験回路を再考し,実験回数を重ねる必要があると判断し更に実験を行っている最中である.また数値解析及び可視化実験による吻合方法の評価も行った.数値解析で得た速度分布による低速度領域及び剥離領域から,ESAs(0),SSAs,ESAs(45)の順に吻合形状が主流を妨げていた.可視化実験では,ESAs(45)には,大きな渦や,再循環領域は観られなかったが,SSAs及びESAs(0)のToe部には再循環領域,Distal部に渦が観察された.Distal部では,ESAs(0)にSSAsよりも大きな渦を観察した.また,ESAs(0)のToe部での再循環領域は,ESAs(0)の吻合部の流路が狭いため主流の大きな妨げになっていた.再循環領域,渦の大きさなどの吻合部の流れの様子からESAs(45),ESAs(0),SSAsの順に流れに対し抵抗が少ないと考えられた. また実験動物を用いたin vivoの実験も並行して行っている.左内胸動脈-左前下行枝による冠動脈バイパス手術を行い,内胸動脈の流量,圧,冠動脈の流量,圧,大動脈の流量,圧っを同時に測定する実験を現在行っておりデータを収集している段階である.また病理学的検討のため左内胸動脈-左前下行枝による冠動脈バイパス手術を側側吻合により行ったモデルの慢性犬を作成中である.
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