2000 Fiscal Year Annual Research Report
関節軟骨欠損部の修復過程における遺伝子発現-関節軟骨発生過程との比較-
Project/Area Number |
12671416
|
Research Institution | Shimane Medical University |
Principal Investigator |
安達 伸生 島根医科大学, 医学部, 助手 (30294383)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
越智 光夫 島根医科大学, 医学部, 教授 (70177244)
|
Keywords | 家兎 / 関節軟骨 / 滑膜 / コンドロイチン硫酸 / コンドロイチン6硫酸化酵素 / 成長過程 / 膝関節 |
Research Abstract |
コンドロイチン硫酸は関節軟骨の主要構成体の1つであり,その異性体としてコンドロイチン6硫酸やコンドロイチン4硫酸が知られている.この異性体比,すなわち,コンドロイチン4硫酸のコンドロイチン6硫酸の比率は関節軟骨の成長過程において増加して成熟個体の正常軟骨では非常に高値を呈することが明らかとなった.この現象には硫酸化酵素の活性の変化が関与している可能性が示唆されている.そこでわれわれは現在までに塩基配列が解明されている硫酸化酵素のうちコンドロイチン6硫酸への転換酵素,すなわちコンドロイチン6硫酸化酵素に着目し,この酵素の発現の変化について家兎関節を用いて観察した.まず,関節軟骨のコンドロイチン硫酸量とその異性体比について観察したところ,関節軟骨中の湿重量あたりのコンドロイチン硫酸量自体には年齢の変化に伴う著明な変化は認められなかった.一方,コンドロイチン硫酸の異性体比は加齢に応じて増加を認めた.すなわち,コンドロイチン6硫酸量は増加したが,コンドロイチン4硫酸量は減少した.この異性体比の増加は骨端線閉鎖頃の比較的若年の家兎で著明であった.以上のことからコンドロイチン硫酸異性体比の亢進は関節軟骨の次に,関節軟骨細胞中からのコンドロイチン6硫酸化酵素の発現について半定量RT-PCRを用いてそのmRNAレベルでの発現を観察したところ,異性体比が著明に増加する身体的発育期に有意なコンドロイチン6硫酸化酵素の発現を認めた.生後2年の比較的壮年期に当たる家兎関節軟骨からはこれらの酵素の発現が認められないものも存在した.また,この酵素の発現量について滑膜組織との比較検討を行ったところ,軟骨組織よりも滑膜組織に方がコンドロイチン6硫酸化酵素の発現量が高値を呈していた.すなわち滑膜組織由来のコンドロイチン6硫酸化酵素がおもに関節軟骨のコンドロイチン硫酸異性体比の亢進に働いていることが明らかとなった.以上のことから関節軟骨の成熟にはコンドロイチン6硫酸化酵素が直接的に関与している可能性が解明された.われわれは関節軟骨損傷部での修復組織はコンドロイチン6硫酸の異性体比が正常軟骨に比べ低いことを証明しており,今後成長過程で発現するコンドロイチン6硫酸化酵素が軟骨修復過程でどのような変化を来すのか解明していく予定である.
|