2001 Fiscal Year Annual Research Report
脳虚血後の神経細胞傷害と傷害抑制に関する研究-アポトーシスおよび非アポトーシス性傷害の検討-
Project/Area Number |
12671475
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
福田 志朗 山口大学, 医学部・附属病院, 助手 (70322245)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 美志也 山口大学, 医学部・附属病院, 講師 (60243664)
坂部 武史 山口大学, 医学部, 教授 (40035225)
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Keywords | 前脳虚血 / アポトーシス / 非アポトーシス的細胞死 / 海馬 / TUNEL染色 / 免疫ブロッティング法 / Ras / Bc1-2 |
Research Abstract |
ラット前脳虚血モデルによる海馬の遅発性神経細胞死における、アポトーシスおよび非アポトーシス的細胞死の発生について研究した。ウィスターラット(雄、体重295〜370g)にイソフルラン麻酔下で手術操作を行った後、笑気70%、酸素30%で両側総頸動脈閉塞および脱血性低血圧による一過性前脳虚血を作成した。 実験(1):虚血時間は10分間ないし15分間とし、再灌流3日後にイソフルラン4%の深麻酔下で4%ホルマリンの灌流固定を行い脳標本を取り出し、ヘマトキシリン-エオジン(HE)染色とTUNEL染色を行った。この結果、虚血10分間と比較して15分間ではTUNEL陽性神経細胞が海馬CA1で増加し、HE染色も同部位で神経細胞の脱落を示唆する細胞の空胞化が増加した。 実験(2):虚血15分間で再灌流2日後と3日後にそれぞれ深麻酔下に液体窒素を頭部に注ぎ脳を急速冷凍・断頭した後に、-20℃下で海馬を摘出した。これから電気泳動用試料を作成し、電気泳動と免疫ブロッティングを行った。アポトーシス的細胞死の調節に関与すると推察されるH-RasとR-Ras、およびアポトーシス発生の抑制に関与するBcl-2を測定した。対照群と比較して再灌流後2日ではいずれも有意な変化を認めなかったが、3日ではH-RasとBcl-2が有意に減少した。Bcl-2の減少は、再灌流後3日でのアポトーシス的細胞死優位な神経細胞傷害を示唆すると考えられた。また、R-RasはRasファミリーの中でも神経細胞に特有とされるが、本研究では一般的に細胞内に存在するH-Rasのアポトーシス的細胞死への関与が示唆された。今後は、Rasシグナルカスケードの下流に存在するPI3kinaseとAktを免疫ブロッティング法で測定し、さらにRas阻害剤投与モデルを作成して同様の測定を行い、神経細胞死の機序とRasカスケードとの関係をさらに詳細に解明する予定である。
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