Research Abstract |
1.周術期における手術部位感染surgical site infection(SSI)の解析のため,初年度は(1)SSIの評価,(2)リスクファクターの評価,(3)SSIとリスクファクターとの関連についての評価,等について検討を開始した。 (1)SSIの評価 消化器外科手術,整形外科手術,眼科手術について,SSIを感染の深さ別(皮膚,皮下組織,筋層,体壁下)に分類してサーベイランスを開始した。6ヶ月間のサーベイランスで,消化器外科手術ではSSI発生率2〜15%,整形外科手術では1〜3%、眼科手術では0%であった。 (2)リスクファクターの評価 内因性・患者関連リスクファクターとして年齢,糖尿病,喫煙,肥満,手術前の入院期間などをチェックした。外因性・手術関連リスクファクターとして,皮膚の消毒,手術前の除毛,手術時間,抗菌薬の予防的投与,手術創の汚染度,インプラントの有無,などをチェックした。抗菌薬の予防的投与については,消化器外科,整形外科を含む外科系12科を対象に,手術術式別に抗菌薬が適正に選択されているかどうか検討した。2〜9%に抗菌薬の不適正な選択が認められた。 (3)SSIとリスクファクターとの関連についての評価 消化器外科手術では開胸食道手術,大腸手術,胃切除術でSSI発生率が高く,手術侵襲の大きさ,手術時間,抗菌薬の予防的投与との関連が示唆された。整形外科手術では,SSIと手術創の汚染度との関連が示唆されたが,統計学的検定には症例数の増加が必要である。 2.次年度は,(1)SSIサーベイランスの症例を増やして,SSIとリスクファクターの関連について有意差検定が可能となるようにする。(2)硬膜外カテーテルおよび中心静脈カテーテルの留置において,カテーテル関連感染とリスクファクター(カテーテル材質,ルーメン数,挿入部位,留置期間,トレッシング等)との関連について検討する。
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